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1.お世話係
「これ直しといて」
「ハイ…」
これで3回目だ。
夜勤リーダーの郡司里々佳から赤ペンでびっしりと修正された新人指導マニュアルを受け取り、花村ゆうりは周りの人に気付かれないようにため息をついた。
時刻は19時になろうとしているところだ。
今年で看護師3年目になったゆうりは、今年度から教育係に配属となった。
病棟の看護師は、黄色、緑、青の3チームに分けられるチームナーシングという方法をとっている。
チームにはそれぞれ物品係、教育係、業務係という役割が与えられているのだが、今年度ゆうりは緑チームに配属され、教育係となった。
病棟における教育係の役割は、新人指導に欠かせないマニュアルの作成や、技術のチェックリスト、年間の勉強会の開催の予定…その他諸々重要な仕事が多数ある。
3月に開催された病棟カンファレンスで「花村が教育係とか大丈夫かよ。物品管理とかに回せよ」等、多少の野次を飛ばされたが、何故か今の病棟責任者や主任のはからいで配属されてしまった。
先程冷たい声で資料を突きつけてきた郡司は病棟一恐れられている6年目の先輩で、ゆうりの新人時代のプリセプターだ。
当時から群を抜いて怖かったが、ここ数年でその怖さにはさらに磨きがかかっていた。
おまけに今年度また同じチームになってしまい、まだ5月だというのに恐ろしい量の仕事を振られて苦痛の極みである。
それに加えてプリセプターも担っているゆうりは日々の業務量に早くも音を上げそうだった。
今日も、教育係の仕事で郡司から冷たいダメ出しを食らったが、ゆうりは懸命にかじりついて、22時に修正を終えた新人指導マニュアルを郡司に渡し、帰路についた。
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