なにが起こってるんだ!?

1/9
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ

なにが起こってるんだ!?

 異世界に召喚されて勇者になる。  剣を使って魔王を倒したり、魔法でドラゴンを倒したり。  夢でもいいから、一度そんな経験をしてみたい。  と、思ったことはあったけど。  実際にそういうことになると、人間の脳は「異世界」なんてものを認めることが出来ないらしい。  ザクザクザクザク、葉っぱが鳴る。  もしかしたらそこに小さな虫がいるかもしれないけれど、そんなことを気にしている場合ではない。  とにかく、走るしかない。  腕に抱えた小さな生き物を抱きしめ直し、出来る限り力いっぱい走った。 (あれなにアレなにアレナニ......!?)  森なのか林なのか山なのか。  とにかく木がたくさん生えた獣道だ。  でこぼこや石に躓きながら、足を動かした。  何故なら。  グルァアアアア!!!!!  耳が引き裂かれそうなほどの咆哮が、周囲に轟いた。  思わず振り向くと、怪物が大きな口を開けている。  真っ黒な翼が、木々の枝を折り、葉を散らしながら迫ってくる。  後ろを見たせいで、地面の凹みに足をとられた。 勢いよく転倒してしまう。  でも、痛みを感じる余裕は無かった。  俺は小さな生き物をお腹に庇うように、地面に丸まる。  怪物がすぐそこまで来ている。 「俺、寝てただけなのになんでぇえ!!」  その問いに応えてくれる人は、誰もいなかった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!