夜空が輝く刻

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その初老の男は、涙目でボクに告げた。 「‥‥‥儂は一体、これから何処に帰ればいいんじゃろうか?」 ひょっとして、ひょっとしなくても、これが噂の典型的な認知症なのかしら!? でも、ボクは、生まれも育ちも全知全能でも天智天皇でも無く、ボク自身の生活も自分で何とかしなきゃならないものだから、初めて出会った相手の素性もその居場所である住まいも知る由も無く、ましてや気にしてしまう余裕すら無い。 ふと我に返ると、ボクはその時、その男の人に呟いてしまっていた。 「‥‥‥このお店の近所に交番がありますから、そちらでお巡りさんとお話されると、どうにかなると思われますけど?」 「‥‥‥‥‥‥‥‥。」 暫くダンマリを決めているお爺さん。時間を気にしながらも、ボクは、その男の人に閑かに告げた。 「‥‥‥ワタクシもこれから御一緒しますから、交番にお伺いされますか?」 すると、彼は、恐怖感に怯えたかの様な口調で答えた。 「‥‥‥ワシは警察だけはイヤじゃ!」 「‥‥‥‥‥‥‥‥。」
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