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「情けないです」
裕樹はグラスを置く。
「優実とは付き合って四年です。実は小学校の同窓会で再会して付き合うことになったんですが、もともと初恋の相手なんです。友達の期間も長かったし、誰よりも優実のことを理解していると思ってました。それなのに、優実に昨日言われたことは、言われて初めて知りました」
裕樹は溜息をつきながら両腕をカウンターの上でピンと前に伸ばす。
「店主さんに言われたこと、昨日家に帰って考えてみたんです。『あなたが当たり前だと思っていることは、彼女にとって、当たり前ではないということです』って。情けないけど、当たり前に思っていたというよりも、特に疑問に思ったことがなかったんです。だから、優実が違和感だと言っていたことも一生気が付かなかったかもしれない」
裕樹は拳を握り締める。
窓の外に見える空はすっかりグレーがかっている。
「価値観の不一致」
「え?」
高円寺の言葉に裕樹は顔をあげる。
「それって、離婚の原因でよく言われる……」
裕樹が苦笑いする。
「はい。その通りです。けれど、よく考えてみてください。不一致ということ自体は当たり前のことなんです」
「へ?」
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