第1章 仕組まれた再会

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 結局誰が主役だったのか分からないお見合いから2年後に、私は武彦と結婚させられた。  2年もかかったのは、武彦がこの期間、アメリカ研修に行っていたから。  この研修は、誰でも行けるわけではないらしい。 「認められた人間しか参加できない、権威あるものなんだ」  父は武彦がアメリカに行っている間、彼のための花嫁修行を強制させられている私に対して、まるで念仏のように言い続けた。 「そんな人間との縁談を持ってきた俺に、一生感謝するんだな」  これも毎日お決まりのセリフとなった。  私が料理教室で学んできた料理を、毎晩作らされたかと思えば「こんなまずいものを武彦くんに食わせる気か」と嫌味を言うのも、もう当たり前のように繰り返された。  1回だけ、結婚前に親睦を深めるという名目で武彦がいるアメリカに行かされたこともあった。もちろん、父も一緒に。 「武彦くん、君は本当に優秀だな。私の息子になるのに相応しい」 「そんなそんな。お義父さん。僕なんか……」  本来であれば、再会を喜び合うのは結婚が決まった男女のカップルなのかもしれないが、私は違った。  目の前で繰り広げられる義父&義理の息子ごっこという、つまらないコントに付き合わされる観客として、冷めた目でその2人を眺めるだけだった。  結局アメリカでは、父と武彦が2人で常に行動を共にし、英語ができない私は1人ホテルに引き篭もるだけ。  もういっそ、父が武彦の嫁にでもなればいいのにと本気で思ったし、自分は本当に父の身代わりなんじゃとすら思った。  このまま、2人が禁断の愛に目覚め、燃え上がり、どこかに逃避行してくれればずっといいのにと気持ち悪い妄想をするくらいには、私はこの結婚から逃げたくて仕方がなかった。  けれど最終的には、武彦の2年の海外研修の直後に、勝手に入籍をさせられ、全く趣味じゃないウエディングドレスを着せられたのだが。  一度も、寝室を共にするどころか2人きりでデートすら、私と武彦はしたことがなかった。  正真正銘、清いままの結婚だったのだ。
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