第1章 仕組まれた再会

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 武彦にとって、私は家政婦であり、父との縁を繋ぐための理由であり、父の期待を背負った子供を産むための道具にすぎない。  彼らにとって、私は対等な立場では決してない。  従わなければ罰を与えられる存在なのだ。  だから、私が意思を持つ事を許さない。  自分たちの世界を構築するために、私を無理やりその世界にカスタマイズし続ける。  それは、何も今に始まったことではない。  池脇家に……父の長女としてこの世に生まれた事による宿命だということを、私はずっと前にいやという程思い知らされている。  たった一度だけ、私は父の意思に背いた行動をした事があった。  けれど、それをしたことで父は私が最もダメージを受ける方法で報復してきた。  それ以来、私は諦めたのだ。自分の人生を生きる事を。父の支配から逃げる事を。  だから、武彦との生活から逃れる事はできない。  それは、どんな痛みを私に与えたとしても、最終的にはそれすらも父の意思そのものなのだから。  私はそうして、呼吸をする死体になったのだった。
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