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第2章 ただ見つめ合っただけでも罪なんですか?
かつて私の世界は、たった1本のレール以外は真っ暗だった。
テレビも雑誌も、親が決めたものしか触れてはいけなかった。
スマホも、家族との連絡のためにしか使ってはダメ。
友人との連絡先交換をしても、必ず父親の検閲が入る。
簡単に言えば、友人の家柄を探偵に調べさせ、父親が気に入った人間だけが合格という扱いになるのだが。
ついでに、高校生になって1年目にできるはずだった友人は、父親の「家柄に合わん」の一言で泡となって消えてしまった。
私にとって学校とは、高卒資格を手にいれるための空間に過ぎず、部活動すら入ることは許されなかった。
たった1つ許されたのは、図書館で静かに本を読む事だけ。
幸いにも、何の本を読んだかまでは、父親には興味がなかったらしく、合格チェックの判定はなかった。
だから私は、授業後から帰宅が強制される時間までの約2時間を、図書館をスタート地点とした様々な世界への旅に使うことができた。
ある時は、タイムスリップして戦国時代を垣間見たり、未来の知識を学ぶこともあった。
またある時は、魔法が使える世界であらゆる夢を現実にすることもあった。
文字を追いかけ、脳で具現化する、自分一人の旅だけが、私を私らしくいさせてくれた。
クラスには、すでに私の席は存在するだけで、存在意義はなかった。
家に帰れば、人権というものは奪われる。
もし、この2時間がなければ、私はきっと屋上から飛び降りていたかもしれないとすら、自殺をテーマにした小説を読みながら思った。
私がそうしなかったのは、まだ知らない世界を見たいという好奇心があったから。
逆に言えば、それだけしか私がこの世界に留まる理由はなかったのだ。
けれど、高2の春にもう1つ私が自殺したくない理由ができた。
八神先生が、クラスの担任として私の前に現れてくれた。
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