第2章 ただ見つめ合っただけでも罪なんですか?

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「どうして私なんかを探していたんです?」  なんか、に妙に力が入ってしまったので、自分の声にも関わらず何だか嫌味ったらしく聞こえてしまった。 「この間の課題について聞きたいことがあったんだ」 「課題……ですか?」  確かに先生は授業中ごとに小さな課題を出す。  習ったばかりの箇所の古語の意味を調べたり、授業で読んだ古文の感想を書いたり。  前者は休み時間が暇なので、さくっと終わらせる。  後者については、内申点に響かないように当たり障りのない回答をするに留めていた……はずだった。 「そう。これ」  先生が見せてきたのは、感想文の方だった。  ちょうど2日前に取り組んだもので、内容は枕草子について。 「どうしてこんな感想を抱いたんだ?」 「何を言って…」  私は怪訝に思いながら、課題のプリントを読み返して「あっ」と声を発してしまった。  そこにはこう書かれていた。  『この作家は自分の好きなものを他人に押し付けるような傲慢な人だと思った』  何でこんなことを書いたんだ。  私はこの時の私に対して恨み節を吐いた。  普段だったら「綺麗な景色が目に浮かぶようです」としか書かなかっただろうに。   「あ、あの……これの何を聞きたいんでしょう……?」  先生に尋ねながら、記憶の奥底まで探った結果、その原因が先生にあることを思い出した。
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