第1章 仕組まれた再会

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第1章 仕組まれた再会

「お前はただ、俺とお義父さんのための道具でいればいいんだ」  そんな風に夫に言われたのは、つい2時間前のこと。  夫のスーツから、いつものように女物のブランド品のレシートが見つかったことを問い詰めた。  それは、今日だけではなかった。その前は1週間前、3週間前、1ヶ月前……数えるのも嫌になるくらいだった。  自分という人間が、どういう理由で妻にされたかを、私は重々承知していたから、今日までは我慢していた。そういうものだと割り切れと、父親からも言いつけられていたから。  でも、さすがに昨日だけは我慢ができなかった。  いつも通り、自転車で1時間もかかる、夫指定のパン屋で私が買った高級食パンのトーストをかじりながらスマホばっかりいじっている夫にコーヒーを渡す前に私は言った。 「昨日、結婚記念日だったの忘れてました?」 「そうだったっけ」  彼はあっけらかんと言った。 「あなた、結婚記念日には手作りのピザが食べたいと言ったじゃないですか」  私は、できる限り敬語を守る努力をしながら言う。  オーブンの中に入れっぱなしの冷めたピザのことを思いながら。 「ああ、そうだったっけ」  手作りピザの話は、1週間前にしたばかりだった。  そして、私が難しいと言うと 「夫の言うことを聞くのが妻の仕事だろう」  と叩かれた。  そうして作られた、不恰好なピザだったのだ。
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