第1章 仕組まれた再会

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 私が、この10歳上の夫と結婚したのは2年前のこと。  地元では知らない人がいない、大病院の院長の長女として生まれた私は、常に病院を経営するための駒として使われ続けていた。  父は、私に医学部へ行くことを決して許さなかった。  大学ではなく短大で、お嬢様として恥ずかしくない教養を身につけるように命じられた。  私は化学式や生物の遺伝子のことを考えるのが好きだったが、そんなことを言えるような雰囲気すら、実家にはなかった。  都内有数の高級住宅街に自宅がある。  送り迎えは外車で、もちろん運転手つき。  自分専用のメイドもいる。  服は誰かが用意した、ブランドもの。  自分に興味がなくとも、周囲にはそれしか興味がない人間が大勢いるので、すぐにどこのブランドのいくらの商品かという情報が、私の耳に入ってくる。  そんな私の状況を、誰もが羨ましいと口を揃えて言った。。 「一体前世どんな徳を積んだの?」  答えようのない問いかけも多かった。  私は「わからない」と答えながら、心の中ではいつもこう思っていた。  徳どころか、これは罰ではないのか。  私という存在から自由を奪うための。  そして、最も自由を奪われたのが、父親が後継者へと考えている年が離れたエリート医師との政略結婚だったのだ。
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