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25.手を取り合って。
「帝国に棲みつく埃の言葉としてお聞きください。ルーク皇子殿下、殿下がユーリ皇子殿下と協力すれば大きな力となると思います。ルーク皇子殿下は皇帝の地位を欲していますか?それとも地位など関係なく帝国に尽くしたいとお考えですか?」
2人が協力しても、皇帝になるのはどちらか1人だ。
皇位を争うという展開になれば、協力関係を維持することは難しい。
「僕は、兄上を支えながら共により良いハゼ帝国を築きたいと思います」
ふわっと柔らかく笑うルーク皇子殿下は美しかった。
「ルーク、お前が俺を支えてくれる気があるなら期待するからな。それと、マリーナは埃でも塵でもない俺の女だから手を出すなよ」
弟のルーク皇子を小突きながら、私を優しく見つめてくるユーリ皇子にはじめて少しときめいた。
「兄上、ご安心ください。僕は先程お会いしたばかりのマリーナ様に特別な感情は抱いておりません。⋯⋯兄上はマリーナ様がお好きなのですか?お2人の恋を応援しますね⋯⋯」
ルーク皇子は、明らかに13歳の幼い私と17歳の青年であるユーリ・ハゼを見比べて戸惑っていた。
兄のロリコン趣味に戸惑いつつも、指摘して良いか悩んでいるのだろう。
「私は、あくまでユーリ皇子の奴隷なので、私達は恋愛関係にはならないですよ。だから、そのような困り顔をしないでください」
私は困り顔のルーク皇子をフォローしたつもりだった。
でも、今、確実に私は自分が発した言葉に傷ついていた。
私はユーリ皇子を好きになり始めている。
(身分も年齢も離れすぎてる⋯⋯この恋は叶わない)
「奴隷じゃないマリーナだ。俺はマリーナと一緒になるから。これから、ルークはマリーナを義理の姉だと思うんだぞ」
私の沈みゆく気持ちを、無理やり引き上げるように明るいユーリ皇子の声が聞こえた。
「はい、マリーナ姉様⋯⋯何か僕にお手伝いできることはありませんか?」
ルーク皇子殿下は素直で良い子のようで奴隷で自分よりも年下の私を、兄に言われた通り「姉様」と呼んでくる。
「そのような呼び方は周りを驚かせてしまいますので、マリーナとお呼びください」
皇子である彼が奴隷の私を「姉様」と呼ぶのを周りが許すはずない。
隣を見るとユーリ皇子はゆっくりと首を振って、ルーク皇子に私を義理の姉として扱うことを強制している。
(もう、本当に頑固なんだから⋯⋯とにかく、今は教師になるため勉強することに集中しよう)
「ルーク皇子殿下、今、ユーリ皇子は平民街に平民向けの学校を作ろうとしています。そこで、私は教鞭を取れるよう学習をしに図書室に参りました。もし、おすすめの本などあれば教えて頂けますか? 」
「学校ですか。何だか羨ましいですね。僕や兄上は貴族のようにアカデミーに通うこともないので、学校で同年代の子と一緒に学習するというのはイメージが湧きません」
「では、ルーク皇子殿下も教師として学校にお邪魔してみてはいかがですか? 」
私はルーク皇子殿下が寂しそうにしているように感じて、学校に行くことを勧めてみた。
「確かルークは勉強が得意だから、王族としてする全ての教育課程が済んでいると聞いている。でも、皇子であるルークが貴族向けのアカデミーならともかく、平民向けの学校で教鞭を執ることは許されるだろうか? 」
「兄上、僕は帝国の人口の9割を占める平民の生活を知りたいとずっと考えておりました。母上には反対されるかもしれませんが、機会が頂けるのなら平民達と関わりを持ちたいと思っております」
ルーク皇子の知らないものを知りたいという気持ちが愛おしい。
そして、平民にも教育の機会を与えたいと彼自信も考えてくれていることが嬉しかった。
「平民に教育の機会を与えると言うのは、今までにない試みです。皇室の慈善事業という形で学校と関わるのはいかがでしょうか?」
「流石、俺の女は冴えているな。正直、チビのマリーナが教師として出向いたら、いくらなんでも平民の子達も戸惑うと思っていたんだ。しかし、同じくチビのルークが教師とて現れたら、マリーナも抵抗なく受け入れられそうだな」
ユーリ皇子殿下の言葉に私は思わず自分のナリを見た。
教師になれるかもしれないと思い、自分が現在13歳であることを忘れかけていた。
(自分の年齢も忘れてしまうなんて、余程、私は教師になりたかったのね)
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