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33.聖女エマの企み。(ユーリ視点)
結局、婚約者を決める最終日まで俺の心は当然のようにマリーナから動かなかった。
「私、ユーリ・ハゼはマリーナを婚約者として指名する」
俺の婚約者指名に拍手が巻き起こる。
1週間もマリーナと一緒にいたことで、彼女が別格であることは皆に伝わっていた。
「ユーリ皇子殿下、困ります。私は奴隷ですよ」
マリーナが珍しく慌てた顔をしているのが可愛い。
アリア王女も、メグ王女もすっかりマリーナの虜になっている。
2人ともここにきた時の強張った顔は嘘のように柔らかい顔をして、マリーナを祝福している。
彼女達の態度の変化は当然かも知れない。
関われば関わるほどマリーナの誰とも比べられない特異さが際立つ。
彼女の慈悲深い心と公平に人を見る姿勢に心を打たれる。
でも、一人だけいつまでもマリーナに敵意を向けている者がいた。
(エマ・ピラルク、笑顔の裏でお前は鬼のような顔をしている⋯⋯まあ、明日には婚約者候補はみんな国に帰るから、もう会うこともないだろう)
♢♢♢
「おはようございます、ユーリ皇子殿下。昨夜は突然、婚前前にも関わらず私を所望されて驚きましたが、今はこうなるべき運命だったと思えています」
朝、起きると隣には、全裸で頬を染めたエマ・ピラルクがいた。
「はあ? 何を言ってるんだお前は」
俺は正直何が起きたかわからなかった。
ベッドの上に裸の俺とエマ・ピラルク。
他の人間が見れば、誤解されてもおかしくない状況だ。
「はじめてのことで戸惑いましたが、私達はやはり愛し合っていたのですね」
エマがそっとシーツをめくって、ベッドについた血痕を見せてくる。
勝ち誇ったように、俺によって昨晩自分は破瓜したのだと言いたげだ。
「お前は、何なんだ。それは、家畜の血か?」
俺の言葉に一瞬血相を変えたエマ・ピラルクはシーツだけを体に巻き部屋の外へ飛び出した。
「待て、そのような姿で外に出られては誤解を招く」
明らかに俺は罠に嵌められようとしていた。
そして、罠によって大切なマリーナを失いそうで怖かった。
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