37.もう、私は間違わない。

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37.もう、私は間違わない。

「メバル伯爵の出張記録で宿泊したホテルと、エマ・ピラルクの聖女巡礼で宿泊したホテルがこの3年で69回ほど被っています。偶然と説明するには頻度が高過ぎます」 イサキはやはり疑問を放ったまま眠れるタイプではなかったらしい。 新しい事実を一晩で洗い出してきた。 おそらくメバル伯爵と聖女エマは男女の関係だ。 「2人は男女の関係ですか?お2人の間にお子様が生まれたとしたら、ピンク髪に青色の瞳か、ピンク髪にエメラルドグリーンの髪の子でしょうね」 私は恵麻が産む子も誠一の子かどうか怪しいと思っている。 彼女は勤め先の整形外科の医師とも不倫関係にあったし、男関係はかなり奔放だ。 私にとって重要だったのは、誠一が私が苦んでる間に恵麻と子供ができるようなことをしたという事実一点だった。 そのような不誠実な男と誰が結婚できるというのか。 そして、エマ・ピラルクは息をするように嘘を吐くところも、貞操観念の低さも恵麻そっくりだ。 恵麻は子供の父親が誰か分からなくても、私の不幸が見たくて誠一を奪って結婚したのだろう。 「ユーリ皇子殿下は銀髪に青色と緑色の瞳を持っているから、エマ様とメバル伯爵との子を殿下の子と偽ることができますね。托卵というやつですか?人間でもそういうことをされる方がいるのですね。カッコウや鳥類の世界の話だと思ってました」 イサキの言葉に思わず笑いそうになる。 この思ったことを、そのまま言ってしまって周りを不快にさせてしまう感じは昔の私そっくりだ。 中学生あたりまでは、不用意な発言で「空気が読めない」と虐められた。 そこで、私はどのような発言が人を不快にさせるかリストアップして避けるようにした。 一連の騒ぎが終わったら、イサキにも「岩田まりなのトラブル回避方式」を伝授しよう。 「何なんだこの気持ち悪い小僧は。こんな小僧のいうことを信じてはなりません。ユーリ皇子殿下! 」 メバル伯爵がユーリ皇子殿下に訴える。 メバル伯爵は誠一にそっくりだ。 平気で「気持ち悪い」などと人を傷つける言葉を吐く。 「気持ち悪いのは、娘と変わらない年頃の全裸の女の肩に、平気で手を掛けているあなたです。メバル伯爵、他の騎士達は皆、エマ様の貞操観念など感じない淫らな格好に目を逸らしてますよ。あなたは彼女と男女の関係にあるから、彼女のそのような姿に抵抗を感じないのではありませんか? そういえば、ポール様と親しみを込めてエマ様があなたをお呼びでしたね。1年ここに住んでいる私は、最近あなた様の名前がポールだと知りました」 「奴隷風情が黙れ! 」 私の言葉にメバル伯爵は激昂する。 この世界に来て、1年献身的に働いていたら私の存在を皆が認めてくれるようになった。 でも、メバル伯爵だけは私を見下し続けた。 (そんなところも22年間、私を見下し続けた誠一と同じ⋯⋯あいつも早いとこ捨てとけばよかった) 「お前が黙れ! メバル伯爵! マリーナは俺の婚約者だ、未来の皇族に対する無礼で厳罰に処してやる! こいつを拘束しろ」 ユーリ皇子殿下の命令によりメバル伯爵が騎士達に拘束される。 「それから、10年前ルーク皇子殿下の暗殺計画についての書類をメバル伯爵の執務室より発見しました」 淡々とした口調でイサキが発した言葉に一瞬皆が静まりかえる。 皇宮内でルーク皇子殿下が暗殺の危機に瀕したことは、皇后陛下の希望で伏せてあるからだ。 イサキより渡されてた書類は、見たこともない文字で書かれていた。
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