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38.断罪される聖女。
「これは、何語? 」
「古代ティクス語です。こちらが解読したものです」
イサキは暗号のようなものを見つけて徹夜で解読したのだろう。
生き生きした顔で書類を渡してくるが、目の下のクマが凄すぎて怖い。
「皇族暗殺未遂は極刑だ! メバル伯爵を牢に連れていけ! 」
書類を覗き込んだユーリ皇子殿下は怒りのあまり叫んだ。
弟の体に消えない傷と、心に一生消えないトラウマを植え付けた相手だ。
ユーリ皇子とルーク皇子は1年前、わだかまりが解けてから非常に仲が良い。
ユーリ皇子殿下が今までの弟への理不尽な怒りをぶつけてきた贖罪のように、ルーク皇子を必要以上に大切にしているのが分かる。
「ユーリ皇子殿下、色々、誤解があるようです。殿下、昨日、私を果てるまで愛してくれたことをお忘れですか? 」
全裸にシーツを巻いたエマは殿下の部屋から血のついたシーツを持ってくる。
昨日までは純潔だったのに、殿下に破瓜させられたとでも言いたげだ。
自分の今の格好としている行為がどれほど下品かも分からない馬鹿女にユーリ皇子は渡せない。
彼女に聖女の力があろうと関係ない、聖女の力がなくても私がユーリ皇子の側にいて彼を守ってみせる。
「また、それか。何の家畜の血だ? 」
ユーリ皇子殿下が呆れたように言う。
「まだ、新しいですね。朝方、メバル伯爵かお仲間に持ってきてもらった血ですか?人間の血か確かめてみましょう」
私は近くにいた騎士の剣を抜き、自分の指を切った。
「おい、マリーナ何している! 」
「ユーリ皇子殿下、見てください。私の血と混じっても、この血は固まりません。これは、人間の血ではありません。馬の血でしょうか?」
「何、この子、頭おかしいんじゃないの? 」
人のことを「頭おかしい」という聖女エマに苛立ちを感じる。
私は恵麻に浴びせられた、この言葉に何度も傷ついてきた。
「え、どう言うことだ。人間の血だと固まるのか?」
私はユーリ皇子殿下の疑問に、この不思議な世界では血液型の概念がまだないのではないかと思った。
型違いの人間の血が混ざると、固まるところを見せる必要がある。
「俺の血とマリーナ様の血を混ぜて、固まるか実験しましょう」
イサキが私の使った剣を奪って、手を思いっきり切る。
血がドバドバ溢れ出して、心配になるが彼は私の意図を理解したらしい。
私は先ほど切った自分の指から、イサキの作った血溜まりに血を垂らす。
「ほら、固まりました。人間の血同士だと固まるのですよ。そして、イサキ早く止血しましょう。あなたは帝国の宝になる子です。商売道具の大切な手を傷つけてはなりませんよ」
私は急いで自分の服の裾をちぎり、イサキの手の出血が止まるように強めに巻いた。
「勢い余って切りすぎました。これから気をつけます」
イサキの笑顔を初めて見た気がして、私は嬉しくなった。
「何、この子も気持ち悪いんだけど」
私は聞き捨てならない言葉を聖女エマから聞き、思わず彼女を怒鳴りつけた。
「気持ち悪いのはあなたです。虚言を吐き、人を陥れようとする托卵女は消えてください!ご自分の格好を見てください。今、一番まともではないのはあなたですよ」
「何よ! 奴隷のくせに! 私は聖女よ! 」
「エマ・ピラルクを牢に連れてけ! メバル伯爵と通じ、俺を堕とし入れようとした悪女だ! 」
ユーリ皇子殿下の命令で、エマ・ピラルクは牢へと連行された。
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