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42.初恋の侑李先輩との再会。
「私は、お父さん達の面倒見ないわよ。お兄ちゃんだって忙しいし。私達はまりなと違って他に家庭があるんだから。親孝行しなさいよ。そもそも、生まれる予定のなかったまりなをここまで育ててくれてくれたんだから」
姉は私の本音に動揺しながらも、私を両親の介護という鎖から逃してくれる気はないらしい。
「お姉ちゃんの子供たちも、もう独立して他の家庭を持っているよね。私は私を家族として扱ってこなかったお姉ちゃんやお兄ちゃんとも関わりたくない。親孝行って言うけど、お姉ちゃんは全くしてないよね」
「私は孫の顔を見せて親孝行をしたわよ。まりなにはできないでしょ」
「私はもし子供が生まれたら、自分の親には絶対に見せたくない。あの人達は、私の子供まで傷つけてきそうだもの。もう、私は岩田家とは関わらないよ。奴隷はもう卒業する。私にも私の人生があるのよ」
ずっと言いたくて我慢してたことを言えている。私だって叶えたい夢があって、自分の人生を諦めたくない。その為には自分が変わらなきゃいけないとやっと気がついた。
「さっさと退院して、お父さんとお母さんの面倒を見なさいよ。あんたにできることはそれくらいなんだから」
姉は声を震わせて私に怒鳴ってきた。
彼女は私が家族を捨てると言ったことに腹を立ててるのではない。
自分が散々道具のように扱ってきた私ごときが、反旗を翻したのが許せないんだろう。
彼女達が私を家族の奴隷としてしっかり洗脳してくれれば、最後までこの毒家族に尽くしたかもしれない。
しかし、私はいつも冷静に客観的に自分の最低な家族を見ていた。
あまりのオーバーワークに思考が停止していたけれど、不思議な夢のおかげで私の心は癒され頭が休まり冷静さを取り戻した。
突然のノックと共に、夢にまでみた侑李先輩が現れる。
もう一度会えたら、彼に積年の想いを告げたいと願っていた。
しかし、記憶の彼以上に今の彼は美しくて光り輝いていた。
彼も年齢と共に衰えてくれていればホッとするのに、美しさに拍車がかかっている。
(白衣が反射板になっているのかしら⋯⋯まだ、私は夢を見ているの? 確か侑李先輩はアメリカで医者になっていたはず)
「え、俳優さん? もしかして、今、撮影中ですか? 」
姉の驚愕の表情と発言に思わず現実に戻された。
夢ではない、現実の姉が侑李先輩に反応しているということは、これは妄想ではないという事だ。
本当に侑李先輩は骨格から顔立ちから完璧すぎて一般人に見えない。
だから、すれ違う人はみんな彼に釘付けになった。
(これが、夢でないなら私の想いを告げたい⋯⋯でも、想いが告げようと決心した勇気が削がれそうな美しさ)
「私は、スーパードクター早瀬侑李です。アメリカから呼ばれて日本に来ました。ちなみに24年程まりなさんに片想いしています。彼女を諦めきれず、この度プロポーズをしに来ました」
侑李先輩は病室に入ってきた時は怒っていたような顔に見えた。
でも、今、私を見つめる目は私を愛しそうに見つめていた昔の彼のまんまだ。
(スーパードクター? 自分で言ってしまって少し恥ずかしいよ、侑李先輩)
その侑李先輩の少し天然な発言で、私は彼が昔から変わってない事に温かいきもちになった。
そして、侑李先輩も私のことをずっと想ってくれていたと告げてくれている。
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