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「お客様が来てからね」
私がそういうと今度は「えー」とブーイングの大合唱だ。
「それなら遊んでないで手伝って。そしたら余ったのを上げるから」
子どもたちは、目を輝かせて「わかったあ!」と私の隣に座って一緒に団子を捏ね始める。
その姿が子どもの頃の自分の姿に重なって目を細めてしまう。
お客様が来た。
最初に来られたのは常連客のブライトさんだ。
英国のハットにパリッとしたスーツを着こなした老紳士だ。
「今年もお邪魔しますよ」
彼は、帽子を外し、丁寧に頭を下げる。
「ようこそ。いらっしゃいました」
私も頭を下げて迎え入れると彼の長年の定位置であるポジションへと案内した。ここからだとよく見えるのだ。
「よう、邪魔するぜ」
浅葱色の着物を着崩しながらも優雅に羽織る長吉さんが短くて粋な挨拶をして入ってくる。
「邪魔するぜ!」
「邪魔するぜ!」
子供たちも長吉さんの挨拶を真似する。
それから次々とお客さんは現れる。
優雅なドレスを来た女性。
擦り切れた軍服を着た若者。
学生服の少年。
オレンジ色のツナギを来た白人。
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