おちきゅ見

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 統一性のない様々な衣装を着こなした人種たちが集まってくる。  それだけではない。  人の中に混じって大きな犬や小さな猫、ライオン、象に爬虫類、宙を泳ぐ魚類や鯨までいる。  お兄ちゃんと妹が彼らの間をくぐり抜けながら出来立ての団子を配っていく。  彼らは、1年に1度だけ口にすることの出来る団子を嬉しそうに頬張る。 「皆さま、今年もお集まり頂き、ありがとうございます」  お父さんがお客さんに向かって挨拶する。 「もうまもなくおちきゅ見が始まります。今年で終えられる方、初めての方、これからも見続ける方と様々な心境でおありかと思いますが、今日という日は是非、共に眺めて、遠き故郷を懐かしみましょう」  お父さんの話しが終わると共に青い光がこぼれ落ちてくる。  この世界では見ることの出来ない青。  煌めくサファイアのような美しい青。  さめざめとして冷たい青。  穏やかで温かな青。  あまりの懐かしさに涙を溢れさせる青。  降り注ぐ青い光はお客さまの琴線を震わせ、慟哭と歓喜の声を上げさせる。  この1年で最も太陽の光を浴びて輝きを放つ青い星。  彼らの故郷。
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