おちきゅ見

5/6

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 地球。  何年、何十年、何百年も前に生きてその足で歩いてきた世界。  彼らは、懐かしみ、涙し、語らい合う。  あの星がどういうところかは知らないけど、今、この日、この瞬間だけはあの青い星に思いを馳せる。 「今年もありがとう。ウサギさん」  ブライトさんが私を見て笑いかけてくる。  私たちの姿は、地球に住む"ウサギ"と呼ばれる生き物に似ているらしい。  尖った耳、クリッとした赤い目、白い体毛、小さな身体、どれだけ似てるか1度見て見たいものだ。 「実はここから地球を見るのはこれが最後なんです」 「と、いうことは転生の許可が降りたのですね」  ブライトさんは、頷く。 「500年振りの地球です」 「今度は、何に?」 「不幸なことにまた人間です」 「そうですか」 私は、これ以上何も言うことが出来なかった。 「今度は、地球から見上げますよ。この月を」 「また、お会い出来ることを楽しみにしてます」 「私は、忘れてるでしょうが是非、声をかけてください」  私は、余った団子を渡す。  私たちの住む月のような丸い団子を。 「良い人生を」  ブライトさんは、にっこりと微笑んで団子を受け取った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加