第2章

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 室内にある大きなテーブルに、ニールが手早く食事を並べていく。  食事のメニューはパンとスープ。あとはサラダという比較的質素なものだ。デザートなどはない。 「ほら、こっちに来い」  ニールはシャノンにそう命令してくる。が、シャノンが動かないことに気が付いてか、シャノンの方に近づき――その身体を、何のためらいもなく横抱きにする。 「ひゃぁっ!」  驚いて、シャノンの口から可愛らしい悲鳴が零れた。  その所為でシャノンが顔を赤くしていれば、ニールが「へぇ」と声を上げたのがわかった。  ……何とも、いたたまれない。  そのままニールはシャノンをテーブルの前にある椅子に腰かけさせると、自身も椅子に腰かける。  けれど、その場所はシャノンの真正面ではなく――隣。肩と肩が触れ合いそうなほど近い距離に、ニールの顔がある。 (……本当に、見れば見るほどそっくり)  ニールの顔を横目でちらりと見つめつつ、シャノンはそう考えていた。  だが、そんなシャノンの様子を気に留めることもなく、ニールは食事を始めた。  きれいな仕草で食事を摂る彼は、どうやら相当育ちが良いらしい。 「……ほら、お前も食べろ」  しばらくして、ニールが端的にそう命じてくる。しかし、シャノンはゆるゆると首を横に振った。 「食欲、ないわ」  ニールのことだ。ここに毒を仕込んでいる可能性は限りなく低い。たかが数時間の付き合いではあるものの、ニールが今、シャノンを毒殺することはないだろうと判断したのだ。 「だから、いらない」  ゆるゆると首を横に振ってそう告げれば、ニールは何を思ったのだろうか、シャノンの頬を手で挟んでくる。
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