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挑発的に唇の端を吊り上げ、シャノンはそう宣言する。すると、ヘクターの眉間が一瞬だけピクリと動いた。
「……本当に、お前という女は――」
ヘクターが小さく何かを呟く。それは、シャノンの耳に届かなかったが、大方憎いとでも言ったのだろう。
「嫌いだ、俺は、お前が嫌いだ。わかるな? 俺に逆らうから、こうなるんだ」
彼がそう言葉を紡いだのを聞いて、シャノンは目を瞑る。
王国の民たちのために死ねるのならば、これもまた理想の死に方なのではないだろうか。
そんなことを、シャノンが思ったときだった。ふと、シャノンの後ろ側の扉が開く。
「……陛下。おやめください」
誰かが部屋に入ってくるのがわかった。シャノンはそちらに視線を向けることは出来ない。ただ、ヘクターが驚いたように目を見開くのだけが、分かった。
「……その女を殺しても、革命軍の士気を高めるだけかと思われます」
その誰かはブーツを履いているようだ。かつかつと音を立てながら、こちらに近づいてくる。歩幅と声からして、男性のようだ。
「じゃあ、どうすればいい、ニール」
ヘクターが男性にそう問う。
その言葉を聞いたためなのか、ニールと呼ばれた男性が立ち止まった。
「生かしましょう。……取引材料として、いずれ利用できるでしょうから」
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