第1章

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 ニールはそう言って、シャノンのすぐ隣に立ち止まった。  彼の顔は、逆光の所為で上手く見えない。ただ、さらりとした緑色の髪が視界に入るだけだ。 「……そうか」  ヘクターがそう声を上げ、剣を下ろす。  しかし、シャノンからすればそれはたまったものじゃない。取引の材料に使われるくらいならば、殺された方がマシだ。 「あと、自死を封じるための魔法をかけておいた方が良いかと」 「そうだな。おい、アントニー、頼む」  ニールは的確にシャノンの道をふさいでくる。それに、シャノンは悔しくて唇をかむことしか出来なかった。  まさか、王国軍にここまでしっかりとした指揮官がいたなんて。そんなことを実感し、シャノンはただ俯くことしか出来ない。 「……しかし、陛下、ニール。この女を何もなく生かしておくのは、いかがなものかと。せめて、焼き印などを入れるべきかと」  だが、アントニーはシャノンの待遇が不満のようだ。彼はシャノンにせめて拷問を行うべきだと進言していた。  ……殺されない拷問など、嫌に決まっている。シャノンはそう思い、視線を下げ続けた。 「そこは、俺に任せておいてください。……いい案がありますので」  ニールがそう声を上げ、シャノンの側に跪く。彼の真っ赤な目が視界に入り、シャノンはぶるりと背筋を震わせた。彼の腹の底が読めない。その所為で、得体のしれない恐怖を感じてしまう。 「……では、ニール。その女の処遇はお前に任せる」 「陛下っ!」 「しっかりと監視と罰を、与えろ」 「はい」  ヘクターの声に、ニールがしっかりとした返事をする。その後、足音が遠ざかっていく。どうやら、ヘクターが立ち去ったようだ。
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