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ニールはそう言って、シャノンのすぐ隣に立ち止まった。
彼の顔は、逆光の所為で上手く見えない。ただ、さらりとした緑色の髪が視界に入るだけだ。
「……そうか」
ヘクターがそう声を上げ、剣を下ろす。
しかし、シャノンからすればそれはたまったものじゃない。取引の材料に使われるくらいならば、殺された方がマシだ。
「あと、自死を封じるための魔法をかけておいた方が良いかと」
「そうだな。おい、アントニー、頼む」
ニールは的確にシャノンの道をふさいでくる。それに、シャノンは悔しくて唇をかむことしか出来なかった。
まさか、王国軍にここまでしっかりとした指揮官がいたなんて。そんなことを実感し、シャノンはただ俯くことしか出来ない。
「……しかし、陛下、ニール。この女を何もなく生かしておくのは、いかがなものかと。せめて、焼き印などを入れるべきかと」
だが、アントニーはシャノンの待遇が不満のようだ。彼はシャノンにせめて拷問を行うべきだと進言していた。
……殺されない拷問など、嫌に決まっている。シャノンはそう思い、視線を下げ続けた。
「そこは、俺に任せておいてください。……いい案がありますので」
ニールがそう声を上げ、シャノンの側に跪く。彼の真っ赤な目が視界に入り、シャノンはぶるりと背筋を震わせた。彼の腹の底が読めない。その所為で、得体のしれない恐怖を感じてしまう。
「……では、ニール。その女の処遇はお前に任せる」
「陛下っ!」
「しっかりと監視と罰を、与えろ」
「はい」
ヘクターの声に、ニールがしっかりとした返事をする。その後、足音が遠ざかっていく。どうやら、ヘクターが立ち去ったようだ。
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