第2章

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(それ、に、しても)  今のシャノンの身体は清められているようだった。衣服も新しいものに変わっている。……男物で多少なりともぶかぶかなのは、仕方がないだろうが。 (……フェリクス殿下)  シャノンはフェリクスが亡くなったと知って以来、恋にうつつを抜かすことはなかった。  彼と結ばれることが出来ないのならば、一生独身で構わない。そう思うほどだった。 (なのに、私は易々と純潔を奪われてしまった……)  それも、敵に。フェリクスにそっくりな男性によって。……シャノンのプライドが、崩れて行くような感覚だった。 「……うぅ」  なんとなく、泣きたい。  その一心で、シャノンは涙を零した。ニールがいない今ならば、泣いても大丈夫だろう。 「……やだ、やだよ」  殺される、もしくは拷問されることに関しては覚悟はできている。しかし――慰み者にされることだけは嫌だった。  シャノンの心は未だにフェリクスにある。彼以外に身体を許すことなんて、考えもしなかった。 「フェリクス殿下……」  静かに彼の名前を呼ぶ。そうすれば、不意に部屋の扉が開く。どうやら、ニールが戻ってきたらしい。  彼は水の入ったコップを持っているらしく、そのままシャノンの側に寄ってくる。 「ほら、喉渇いただろ? 飲め」  乱暴にそう声をかけられ、コップがシャノンに差し出される。  確かに散々喘いだこともあり、喉はカラカラである。けれど……。 「……飲みたく、ない」  ボソッとそう言葉を零してしまった。  もしかしたら、水や食事を拒んでいれば衰弱して死ねるかもしれない。  そうすれば、誰にも迷惑をかけずに――。  シャノンはそう考えたのに、ニールに半ば無理やり上を向かされた。彼と無理やり視線を合わせられると、気が付く。  ――彼は、怒っている。 「いいか? お前が死んでも現状誰も得しないんだよ。……衰弱死するつもりなら、あきらめろ」
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