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ふと、一人の兵がニールにそう問いかけた。その瞬間、シャノンの身体がびくりと跳ねる。
ゆっくりとニールを見つめれば、彼の目は何の感情も宿していなかった。
「どうするも何も、俺が監視するだけだ。……それ以外のことなんて、ないな」
「ですが、ニール様がそんな風にするなど、今までは――」
兵が心底不思議そうにそう問いかけたとき。ニールのオーラが突然刺々しいものに変わった。
「お前らには関係ないことだ。……今後、一切こいつのことで口出しするな」
そう言った彼の声は、地を這うように低くて。シャノンも思わず肩を震わせる。
すごまれたくらいで、怯むような人間じゃないとシャノンは自分を評価していた。
だが、ニールのオーラはただ者ではなかった。その所為で、すごまれたわけではないシャノンでさえ、怯えの色を色濃く宿してしまう。
「……ちょっと、態度が行き過ぎたな。悪かった」
けれど、彼はすぐに冷静になったらしくそう謝罪をしていた。兵たちはそれにほっとしたらしく、またゆっくりと歩き出す。
心なしか、シャノンの腰に回されるニールの手が、震えているような気がした。
(どうして、このお方は……)
シャノンのことになると、感情を露わにしたのだろうか?
そんな疑問を抱くものの、もしかしたらただの偶然かもしれない。ニールは人に深入りされたくない性質なのかもしれない。いや、そうだ。そうに決まっている――。
(そうじゃないと、まるで私のことで怒ったみたいじゃない……)
少なくとも、シャノンとニールは初対面だ。しかも、敵同士。情が移ったと思えるほど共に時間を過ごしたわけでもない。
だから、ニールがシャノンのために怒るなんてこと、あり得ないのに。
「……どうした」
「……何でもないわ」
ニールのそのまなざしが、一瞬だけ優しくなったような気がして。
シャノンの胸が、柄にもなく高鳴っていた。
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