第2章

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 ふと、一人の兵がニールにそう問いかけた。その瞬間、シャノンの身体がびくりと跳ねる。  ゆっくりとニールを見つめれば、彼の目は何の感情も宿していなかった。 「どうするも何も、俺が監視するだけだ。……それ以外のことなんて、ないな」 「ですが、ニール様がそんな風にするなど、今までは――」  兵が心底不思議そうにそう問いかけたとき。ニールのオーラが突然刺々しいものに変わった。 「お前らには関係ないことだ。……今後、一切こいつのことで口出しするな」  そう言った彼の声は、地を這うように低くて。シャノンも思わず肩を震わせる。  すごまれたくらいで、怯むような人間じゃないとシャノンは自分を評価していた。  だが、ニールのオーラはただ者ではなかった。その所為で、すごまれたわけではないシャノンでさえ、怯えの色を色濃く宿してしまう。 「……ちょっと、態度が行き過ぎたな。悪かった」  けれど、彼はすぐに冷静になったらしくそう謝罪をしていた。兵たちはそれにほっとしたらしく、またゆっくりと歩き出す。  心なしか、シャノンの腰に回されるニールの手が、震えているような気がした。 (どうして、このお方は……)  シャノンのことになると、感情を露わにしたのだろうか?  そんな疑問を抱くものの、もしかしたらただの偶然かもしれない。ニールは人に深入りされたくない性質なのかもしれない。いや、そうだ。そうに決まっている――。 (そうじゃないと、まるで私のことで怒ったみたいじゃない……)  少なくとも、シャノンとニールは初対面だ。しかも、敵同士。情が移ったと思えるほど共に時間を過ごしたわけでもない。  だから、ニールがシャノンのために怒るなんてこと、あり得ないのに。 「……どうした」 「……何でもないわ」  ニールのそのまなざしが、一瞬だけ優しくなったような気がして。  シャノンの胸が、柄にもなく高鳴っていた。
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