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その後、シャノンが連れてこられたのは豪華絢爛な王城の一室。
以前より多少は豪華さは失われたものの、相変わらず趣味の悪い部屋だ。そう思いつつ、シャノンは床に押し付けられる。もちろん、手枷はつけられたままである。
部屋の中央には、豪華な王座があった。そのに腰掛けている人物に、シャノンは見覚えがある。
このジェフリー王国の現国王であるヘクター・ジェフリー。父王に次いで、圧政で民たちを苦しめる王。
ヘクターを力いっぱいにらみつけていれば、不意に彼の隣から一人の男性が顔を出す。四十代か五十代に見えるその男性の顔を、シャノンはよく知っている。
「やぁやぁ、シャノン・マレット伯爵令嬢。……いや、今はただのシャノン・マレット、か」
わざとらしく芝居がかった口調で、男性はそう言ってシャノンの方に近づき高圧的な態度でシャノンを見下ろしてきた。
「……トゥーミー卿」
シャノンが憎々しいとばかりに彼を見上げ、そう名前を呼ぶ。すると、彼はわざとらしく手を広げた。
「覚えていてくださったとは、光栄です」
彼はその鋭い金色の目を細めながら、シャノンを見下ろす。その目には憎しみがこもっており、大方王家に歯向かうシャノンたちが気に食わないのだろう。
ちらりとヘクターに視線を向ければ、彼は何も言わずに王座に腰掛けている。その目は、シャノンを見つめていない。まるで、興味がないとでも言いたげだ。
(……ヘクター・ジェフリーは私に興味がないのね)
そう思ったものの、この状況が変わるわけではない。
だからこそ、シャノンは口を開く。
「トゥーミー卿。私のことを、どうするつもりで捕らえましたの?」
顔を上げ、そう問いかける。
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