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トゥーミー卿……本名をアントニー・トゥーミーはこのジェフリー王国の宰相である。先代の国王の代から宰相の地位につき、王国を裏で支えてきたと言われている人物だ。しかし、シャノンはどうにもアントニーのことを好きにはなれなかった。
なんというか、胡散臭い雰囲気が全身から漂っているのだ。
「私のことを取引の材料として使うのは、止めた方が良いわよ。……私一人の命で、革命軍が止まるとは思えないもの」
取引に使われるくらいならば、拷問されて殺された方がずっとマシだ。
心の中でそう思うシャノンを見つめ、アントニーは顎を撫でる。
「ふむ……そうですね。確かにそれは一理ある」
少し考えるようなそぶりを見せたアントニーは、後ろに視線を向ける。そこには、ヘクターがいた。
「陛下、シャノン・マレットの処遇をお決めになっていただきたい。……見せしめとしての処刑が、最も正しい判断かと私は思いますが」
「……そう。アントニーの思うとおりにすればいい」
ヘクターはアントニーの言葉にそう返事をすると、王座を立つ。
そのままシャノンの方に近づいてくる。手には剣が握られており、大方彼が自らシャノンを始末するのだろう。
(……まぁ、そっちの方が良いわね)
自分の命が取引の材料に使われるくらいならば――シャノンは舌を噛んで死ぬつもりだった。
国王自ら殺してくれるのならば、死ぬ手間が省けていい。
「おやぁ、陛下自らやられるのですか?」
「……あぁ、この女は嫌いだからね」
それはきっと、シャノンが革命軍リーダージョナスの娘だから出た言葉なのだろう。
そう思いつつ、シャノンは目を瞑る。いっそ無残に殺してくれた方がいい。そうすれば、父も変にシャノンが生きていると期待しなくていいはずだから。
「……命乞いを、しないんだな」
ヘクターがシャノンを見下ろし、喉元に剣の切っ先を当てながらそう問いかけてくる。
……命乞いをしたところで、彼が止まるとは思えないのだ。
「えぇ、革命軍の枷になるくらいならば、私は死んだ方が良いと思っていますもの。……どうぞ、ひと思いに殺してくださいませ」
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