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白虎と対峙
「リンはよく玄武に懐いてるね。妬けてしまうよ」
一麒が僕の腰を抱いてきた。最近はスキンシップも増え、隙あらば僕の身体に触れてくる。もちろん嫌ではない。一麒が嬉しそうだし、彼の笑顔を見るだけで胸の奥が暖かくなる。……でもちょっとまだ恥ずかしいのだ。言葉遣いをくだけた口調にするだけで精一杯だ。堅苦しい敬語はイヤだと言われて普段口調にするよう頑張っている。
「ふふ。可愛いね。耳が赤いよ」
「一麒様、リン様をあまり虐めないで下さいね」
「もう、からかわないでよ」
麒麟は【仁】の力を持つという。つまりは愛だ。愛すること、慈しむことだ。一麒の声にはその力が乗るのだという。だから聞いたものは心を落ち着かせ陶酔していく。
青龍や朱雀からはリン様からも【仁の波動】が感じられますと言われた。僕は本当に番候補なんだろうか? 未だにわからない。
「リン。今日も中庭に行くのかい?」
一麒が僕の髪にキスを落としながら聞く。日に日に僕への接触回数が増えて来ている。最初から距離感がおかしかったが、次第に肩を組んだり、腰を抱いてきたりしだした。一麒が言うには僕に触れると力が湧くのだという。僕自身そんな風に触れられて嬉しく感じていた。
「ん~? 僕ってチョロいのか?」
「ふ~ん、自分でチョロいってわかってんのかよ」
池のほとりで白虎が立ってニヤついていた。ではもう夕方なのか? 草いじりに夢中で時間がたつのを忘れていた。白虎は見た目は少年なのに仕草がエロ親父っぽい。コイツ本当は何歳なんだろうか?
「うるさいよ。一麒なら書き物をしていたよ。早く会いに行けよ」
白虎相手だとついついぞんざいな言い方になってしまう。本当はもっと白虎と話してみたいが、ふざけた態度に腹が立つ。背を向けてその場を立ち去ろうとした。
「ちょっ、待てよ」
白虎が僕の手を掴んだ。瞬間、白虎の背後から黒い影が抜け出ていった。
「うわっ……なんだ?今の?」
「わからないが、何かよくないモノだった気がする。大丈夫か?」
「ああ。リンが俺に浄化をかけたのか?」
「なにそれ? よくわかんないよ」
「そうか……今日はお前に用があるんだ」
「ふうん。僕も白虎に話があるんだ。なんでそんなに僕を嫌うんだ?」
「別に……嫌ってなんかいない。一麒様が気に入ってるのは確かだし。だからこそ、お前がどういうつもりなのかが知りたいのさ」
「正直、世界がどうとかってのは漠然過ぎてわからない。だけど一麒を支えたいと思ってるよ」
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