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いちゃいちゃ
玄武は白虎に気をつけろというが白虎は玄武に気をつけろという。
どうしたらいいんだ? 誰を信じたらいいのかわからない。
「リン? どうしたのだ? 顔が青いようだが」
「一麒。なんでもないよ。ちょっと疲れただけだよ」
だめだ。一麒に心配かけちゃ。ただでさえ公務で忙しい身なのにこれ以上つまらないことで気をつかわせちゃいけない。
「リン様は今日は一日中庭にいらっしゃった様子。手入れに夢中になられたのでしょう? 疲れてるならいいお茶がありますよ。お淹れしましょう」
玄武の茶は飲むなって白虎は言ってたよな。
「いや、のどは渇いてないよ」
「ではちょっと息抜きに散歩にでよう。リン着いてきてくれ。今日は一日書き物をしていて身体を動かしたいんだ。玄武、悪いが書類の整理をたのむ」
「御意。お気を付けくださいまし」
笑顔で僕たちをみおくる玄武はどう見ても気のいいおじいちゃん執事だ。
一麒が僕の手を取り、少し先を歩く。
中庭までたどり着くと池のほとりで抱きしめられ、そのまま耳元で囁かれた。
「何が気になるのか私には教えてもらえないかな?」
「……っ! かず……き?」
恥ずかしさにその手を振りほどこうとして更に抱き込まれた。
「しっ。夜は玄武の世界だ。こうしていても私たちの事を観察してるだろうね」
一麒の言葉にどきっとする。迂闊なことを言うと僕が四神を疑ってると伝わってしまう。
「そうなんだ……」
「そうそう。このまま互いに耳元で囁こう?」
心なしか一麒は楽しそうだ。わざとじゃないよね?
「実は……」
僕は一麒に白虎と玄武の話をした。最初は面白そうだったが聞き終わったころには眉間にしわを寄せていた。
「リン。君の心を不安にさせて申し訳ない。四神達の統率に乱れが出ているのは確かだ。私の霊気のバランスが崩れてきてるからなんだ」
「一麒は僕に触れると力がでるの?」
「そりゃあもう。離れたくなくなるほどに」
「ならば今日から僕も一緒の寝室で寝るよ」
「……っ! いいのか?」
「……うん」
思い切って言ってみたが顔が熱い。きっと僕の顔は真っ赤になっているのだろう。
「ふふ。リンから言って欲しかったんだ」
一麒が嬉しそうに僕を頬ずりをした。え? なんかはめられた感じ? 僕の腰を抱く腕の力が強くなった気がした。
「でも私はリンを大事にしたい。無茶なことはしないと約束する」
「うん。ありがと」
「あぁ! こうして触れるだけで心身共に充実するなあ!」
急に大きな声で一麒が叫ぶ。その芝居じみた様子にふふふと笑いが溢れる。
「よし、いいぞリン。イチャついて仲良しアピールだ」
聖廟殿に戻ると玄武が何か言いたそうな顔で待っていた。一麒の言う通り僕らの話をきいたのだろうか? 僕を見る目が幾分鋭い気がするのは白虎の忠告を聞いたせいだろうか。
「今日からリンは私の寝室で共寝をする」
「……御意」
僕は玄武の顔をまともに見れなくて俯いたままその場を離れた。
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