1-4 雨宿りはいらない

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 大きな通りに出て、交差点の横断歩道を渡る。ぷちがちょこちょこと先頭きって歩くのに、私はひやひやした。いきなり駆け出して、曲がってくる車に轢かれたらどうしよう。  でもそんな心配なんてどこ吹く風で、ぷちは無事に横断歩道を渡り終え、先にある公園へ一足早く飛び込んでいった。そういえば、私たちが公園に向かっているのが、なんで分かったんだろう。  広いわかば公園には、たくさんの遊具に、サッカーのできるグラウンド、亀や鯉の住む池がある。更に木々に囲まれた遊歩道を行くと、東屋が点在する芝生の広場に出た。その頃には空は随分暗くなっていて、見上げる先にほっそりした鋭い三日月が浮いていた。  晴れていたはずの空には、いつの間にか大きな雲が湧き始めていて、月の方へゆっくりと流れ込んでいくのが見える。 「あっ、あれ! ほら見て!」  けれど一番星はまだ雲に覆われてはいなかった。西の方角に一つだけ、ぴかりと光る眩い星。家々の灯りや高い建物がそばにないせいかよく見える。 「あれが金星か」 「そう、宵の明星。間違いないよ」  旭が空を見上げて、そばに伏せて前足を舐めていたぷちも、彼と同じ方角を向く。  しばらく私たちは明星を見つめていた。そして、どこかに星座が見えないかとも探したけど、残念ながら曇る空には星座を作れるほどの星は見当たらなかった。 「北斗七星も見れたらよかったね」 「いや、これで十分や」旭は西の金星を見上げたまま首を振る。「名前のわかる星を見たんなんか、初めてや」  その横顔を見て、空を見上げて、また横顔に視線を戻しても、旭は星を見ている。星空観察を気に入ってくれたなら、私も嬉しい。  にゃんと鳴き声がした。靴を前足で引っ掻くぷちを、旭が抱き上げる。 「こいつも、満足したって」 「ほんとに?」 「ほんまやで」  抱っこされてまんざらでもない顔をするぷちを見て、「おい、寝るな」と彼は笑う。それを見ると何だか充足感を覚えて、私も同じように笑った。
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