1-5 雨宿りはいらない

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1-5 雨宿りはいらない

 ――明日、雨を降らせる。  中間試験が終わったばかりの日曜日の夜、旭からスマホに短いメッセージが届いた。連絡先は交換していたけど、お互いにほとんど使ったことはなかった。  月曜日の十六時、彼は図書館の隣町を指定した。五丁目の記載まである。  雨を操れるなんて、到底信じられるわけがない。けれど彼がそんな嘘をつく理由も思いつかなくて、とりあえずスマホに天気予報のアプリを入れて、彼が示した場所を手入力で登録した。明日の予報は晴れ。降水確率は十パーセントで、雨が降るとはまず思えない。  そんなことはすっかり忘れて過ごした月曜日、学校から帰る前にメールをチェックしようと画面を見て、思わず「えっ」と声が漏れた。「雨雲接近中」の文字が通知されていた。予報を見てみると、今日はずっと晴れマークが続いていたはずなのに、途中から傘マークに変わっている。その時刻は、十六時。  急いで学校を飛び出して、スマホのGPSを頼りに早足で歩いた。行ったことのない町を目指して、休館日の図書館の前を通り過ぎて、バス停を素通りして。いつの間にか十六時を過ぎていて、目的地が近づくにつれて、あっという間に天気は悪くなった。  指示された町の一丁目に辿り着いた時には小雨が降り始めていて、私は折り畳み傘をさす。雨粒はみるみる大きくなって、五丁目では大粒の雨が傘を叩くようになっていた。時計を見ると、十六時二十分。水たまりの大きさを見ると、五丁目で十六時から雨、という予報はドンピシャで当たっていたみたい。 「ほんとに降ってる……」  傘の下から灰色の空を見上げる。今日は晴れの予報のはずだったのに、この土砂降りはなんなんだろう。まるでこの場所をピンポイントで狙って、雨雲が集まっているみたい。
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