1-8 雨宿りはいらない

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「だから、七瀬さんみたいに理解してくれる人がいて、安心したよ」  理解してくれる人。その言葉に、何だか恥ずかしくなってしまう。今日はこんな気持ちばっかりだ。 「よく図書館で会うって聞いてるよ。読書が好きなのかな」 「えっと、はい」 「読書もやけど、宇宙が好きなんよな」 「ちょっと……」 「話したったらええやん。なんやっけ。おおぐま座の話とか、おもろかったよ。くまが投げ飛ばされて星座になったってやつ」  大きなくまが森の大王に空に投げられて星座になった。確かに私はその話を旭に聞かせていたけど、こうして他人に紹介するほど楽しんでくれていたとは思わなかった。  私と居る時は聞き役に回ることが多い旭が、今日はよく喋る。それだけ、ここは彼にとって安心できる場所みたい。  出雲さんも「どんな話かな」って言ってくれるから、私も促されるままに話をした。  いつの間にか一時間が過ぎて、私たちは帰ることにした。本当に旭に用事はなく、ただ先生と話すためだけに、ここまで来ているようだった。  玄関で先に靴を履き替えた旭が、外に出る。私もスリッパを脱いでローファーにつま先を通した時、右肩を軽く叩かれた。 「器用に見えて、実は不器用なやつだから」出雲さんが私に囁く。「これからも、旭をよろしく」  咄嗟のことで声が詰まってしまう。私が旭をよろしくって、一体どういう関係に見えているんだろう。  でも、この人は旭を心配しているんだ。その気持ちに気が付いて、私は振り返りつつ「はい」って頷いた。 「なんかあったん?」  ドアを引いて旭が顔を覗かせる。「なんでもないよ」急いで返事をして、私は慌てて部屋を飛び出した。
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