1-1 雨宿りはいらない

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1-1 雨宿りはいらない

 桜浜高校に入る前、私には図書館以外にも高校生活に期待することがあった。  それは部活。みんなでわいわいして、少しドキッとすることもあったりして……いわゆる青春に必要不可欠なものだと私は思ってた。だから入学前から期待していた天文部へ、見学もそこそこに入部届を出したんだ。  高校誘致のパンフレットの部活一覧に、中学校にはなかった「天文部」の名前を見つけた時には、「これだ!」って思った。  ただ、なんというか、そこは私には合わなかった。  「天文部」とは名ばかりの、いわゆるカースト上位、一軍男女が恋人を探すべく集った場所だったんだ。リア充……いや、リア充予備軍の集まりに、垢抜けない私が馴染めるはずがなく。  夜に屋上で天体観測……なんていうのは夢見過ぎだったけど、男女問わず、苗字ではなく名前で呼び合いましょうという謎ルール。距離の近さは私にとって戸惑いしかなくて、いきなり「梓ちゃん」なんて名前しか知らない男子に呼ばれる違和感に慣れなくて。  星の話は一割未満、SNSの見せ合いだとか、エキチカのデートスポットの話だとかが、部活中の話題の九割以上を占めていた。彼らはたとえ天体観測に行っても、望遠鏡よりスマホを覗いている時間の方が長いだろう。  この場が悪いというよりも、私には向いていない。そう思って、半月で私の天文部活動は幕を下ろした。結々には、さっさと他の部活に入った方がいいよって言われたけど、その気力が湧かないうちにタイミングを失って、図書館に入り浸る時間も長くなった。
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