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「それに、会ってみたいってだけじゃなくて、実際に占って欲しいし」
「……あっ、大地くんのこと?」
うっかり口にすると、小声だったにも関わらず、結々は慌てて私の頬を両手で挟んだ。
「しーっ。図星だけどバレちゃうじゃん」「ごえん……」
ごめんと上手く言えなかった私から、やっと結々は手を離した。頬をさすりながら、私は結々と一緒に教室の後ろへちらりと視線を向ける。
男女グループの中で談笑している、佐久間大地。中学時代はサッカー部に入っていて、今も仲間たちと昼休みに外でサッカーをしている姿をたまに見る。すらっと背が高くて、男女問わず誰とでも会話のできる、天文部のメンバー。私は部活繋がりで彼を大地くんと呼ぶ権利を得たけど、気さくな彼は今や誰からも親しく名前で呼ばれている。コミュ力の鬼、と私は密かに呼んでいる。
精悍な顔立ちの彼を狙っている女子は多いと、その一人でもある結々から聞いていた。とはいえ高嶺の花だから見ているだけでいいと彼女は言う。それでも気になるのは当然だと思う。
どっちの目が合ったせいかわからない。両方かもしれない。私たちの視線に気づいた彼は、「なになに?」と席を立ってさっさとこちらにやって来た。ここで、じろじろ見られて気持ち悪いと言わずに、話しかけに来るところが彼の良さだと思う。
「あっ、ごめん、特に何も……」語尾が窄まってしまう結々が可愛い。
「そう?」相変わらず気さくな彼は、私の手元に目を落とした。
「お、梓ちゃんが持ってる雑誌、俺も読んだよ」
男の子からの呼ばれ慣れない呼び方にむずむずしながら、「これ、結々のだよ」と私は話題を振る。
月曜日の昼下がりは、こうして和やかに過ぎて行った。
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