お月見泥棒は月の精

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「おじいちゃん、月見団子の精になっちゃったの!?」 「違うわい!月の精じゃ!」  私に摘まれたまま顔を真っ赤にして怒るおじいちゃんは全身白タイツのようなものを着ており、どう見ても団子の精か変態だ。  おじいちゃんは亡くなって気がついたら月の精になっていて、それ以来本当に毎日おばあちゃんを見守っているのだとか。  そして中秋の名月の夜、お月見をしている場所にだけこうして姿を現して地上に降り立つことができるという……。 「何で今年は真希だけなんや。ご馳走もあらへんし、もうワシの事忘れてしもたんか…」  お皿のふもとに下ろされたおじいちゃんは、月見団子に身を預け、よよよと泣く素振りをする。 「違うよ、おばあちゃんが風邪を引いたから今年は中止にする…って、もしかして毎年おじいちゃんあの場にいたの?」  去年は確か、月が見えない上に私も3つ下の弟も受験生だというのにも関わらず、ご馳走だ、やれ歌えや踊れや大騒ぎしていた。  おばあちゃんはニコニコしながら私達のその姿を見ていたようだったけど…。 「おったさ。ばあさんの隣で酒と団子を堪能しとった」 「え、全然気が付かなかった。おばあちゃんはその事を知っていたの?」 「いや、多分気がついとらん」とおじいちゃんはしょぼくれる。  そりゃ気がついていたら、何としてもお月見を開催していただろう。 「でもさ、こうやって月見団子まで準備して楽しみにしていたみたいだし、見えなくてもおじいちゃんを感じていたんじゃ無い?」 「そ、そうか」  顔をあげたおじいちゃんは満面の笑みだった。
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