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相手が大好きだったおじいちゃんだからかもしれない。
それとも月の光が綺麗すぎて、現実味がないのかもしれない。
こんな摩訶不思議な事態を、素直に受け止めている自分がいる。
「きれいな月だね」
「そうじゃな」
「おばあちゃんもきっと眺めているよ」
「いや、今は薬が効いて寝とるようじゃ…」
「そっか、残念」
私達ふたりは月見団子を食べながら、静かに満月を眺めてその美しさを堪能する。
「そろそろ寝るね。明日も早いし」
私は硬い椅子に座っていたことによって痛くなったお尻をうんしょ、と上げる。
「そうか。ワシはもうちょっとここにおるわい」
おじいちゃんはその小さな身体のどこに入っていくのか、5つ目の団子を頬張りながら答える。
「うん、また来年ね。来年は…実家でお月見しようね」
「そうじゃな、楽しみにしとるでな。あ、和江さんにの、芋の煮っ転がしにイカを入れないようにゆうといてくれるか?」
「え?何で?おじいちゃんイカ好きだったじゃない」
おじいちゃんが好きだったメニューに加えて、お月見らしく里芋料理を、と母がいつも言いながら準備している1品。
「炊いたのはどうもな。イカは焼くか干物が美味いんじゃ」
「へぇ。伝えておくよ」
おやすみなさい、と言って私は部屋の中に入った。
そうだ、来年は私も一緒にご飯を作ろう。
そうすれば母もご馳走を作らないわけにはいかないだろう。
イカを捌いて美味しく焼いて。
満月のようなまん丸のイカリングフライも美味しいかも。
おじいちゃん、来年は一緒に月見酒を飲もうね。
私はカーテンの隙間から入る月の光を感じながら、来年も晴れる事を祈った。
おしまい
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