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第1話
…… 何で音楽部なのに、理科室なのだろう? ……
◇◇◇
爽やかな初春の風が理科室に吹き込んだ。窓から外を見ると、菜の花畑が見える。黄色い花の帯が河川敷に沿って広がっている。陽は西に傾きかけている。空気中の水分が、風景を輝かせているように見えた。
音楽部の活動が終わり、皆が帰った後、私は理科準備室を扉をノックした。
「はいどうぞ」
中から男性教師の声がする。私は「失礼します」と言うと、扉を開け、中に入った。
準備室のデスクの前に古沢先生が座っていた。
古沢先生は、今年から水島高校に赴任した理科教諭。20代後半の若い先生だ。身長は180cmくらい。眼鏡をかけているが、その顔は穏やかさに満ちている。その姿を見ているだけで、なんだか心が落ち着く。きっと優しいんだろうなあ。
「どうして音楽部なのに、理科室で練習するのですか?」
私が訊ねると、先生は、角ばった眼鏡のまん中を人差し指で押し上げて、「私が物理の教師だからだよ」と答えた。
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