第1話

2/11
1797人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
「なるほど、分かりました。ありがとうございます」  私がそう言って頭を下げ、準備室から出て行こうとすると、「野々目(ののめ)さゆりさん。の早すぎませんか?」と背後から声をかけられた。 …… 先生、もう私の名前を覚えてるんだ ……  そう思うと、とても嬉しい。 「顧問の先生が理科担当だからっていうの、とても分かりやすい気がしましたから」  私が振り返ってそう答えると、先生は、「もし、そうではないとしたら?」と言い首を少し傾げて私の目を見た。視線がぶつかり、ちょっぴりドキッとする。 「え? そうではないのですか?」 「ほらほら、そう言われると、やっぱり気になるでしょ?」  確かに先生の言う通りだ。  音楽部は、管楽器や弦楽器、打楽器などを使って練習するので、机を移動することができない理科室での練習はとても面倒くさい。打楽器は理科室に入れず、いつも廊下で演奏している。  音楽部が、音楽室ではなく理科室で活動しなければならない理由が他にあるのなら知りたいと私は思った。 .
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!