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「先生。私たちが音楽室を使えない本当の理由って、何ですか?」
そう訊くと、古沢先生は、私から視線を外し、準備室の天井を見ながら言った。
「それは、自分たちで考えてみてください」
「え? それは古沢先生が考えることなんじゃないんですか?」
「ほらまた、すぐにそうやって人を頼る。人を頼っている限り、あなたたちは幸せになれませんよ」
「。。。どうしてそんな冷たいことを言うんですか?」
「冷たいか熱いかではありません。君たちの探求心こそが、解決の糸口なのです」
◇◇◇◇◇◇
「へえ。古沢先生、甘いマスクしてるのに、意外と冷たいんですね」
トランペットを吹いている同級の誠司が言った。
「音楽室を使ってるのって、いつも軽音部よね? 軽音部は、3年連続で全国大会に出場している実力派よ」
2年の友美先輩が呟くように言う。
「でも、軽音部って部員3人じゃないですか。部員24人の音楽部からしたら、割に合わない話ですよね」
同級のアニクが言った。アニクは1年生の途中でインドから転入した男の子。背が高く目は青い。オーボエを担当している。外国人なのに、日本語を巧みに操っているアニクって不思議だ。
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