第12話 心に秘めた愛

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第12話 心に秘めた愛

「これで大丈夫か?」 キースが私に尋ねる。 もうすぐ日が沈みそうな、オレンジ色の空が窓から見える時間。 私はキースの部屋に来ていた。 今日は、これから私とキースとカインの3人でステラの花屋へ行く。 お忍びのため、キースは私服で変装することにしたのだった。 「最後に伊達メガネをかけたら完成です!」 私はキースにメガネを渡す。 「どうだ?」 メガネをかけたキースが私のほうを振り向いた。  (知ってたけど、カッコイイ!!!) 「とてもお似合いです! ありがとうございます!!!」 「は? なんでお礼を言われるんだ」 「あ、ごめんなさい! つい……」  (ダメだぁ。メガネの破壊力ヤバいでしょ!) 「あ、あの、そろそろカインさんが来る頃ですね」 私は慌てて話題を変える。 コンコン ちょうどその時、キースの部屋をノックする音が聞こえた。 「キース様、カイン、参りました」 「入っていいぞ」 キースが返事をすると、カインが静かに部屋に入ってきた。 カインも今日は私服を着ている。  (わぁ、カインさんも素敵! こう見ると本当に矢野さんみたい) 「何を見惚れているんだ?」 私が営業の矢野さんを思い出してボーッとカインを見つめていると、頬を軽くつねられた。 「痛いです、キース様!」 「ははっ、お前がボーッとしているのが悪い」 私とキースが笑いながら言い合う。 「お前たち、いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」 それを見たカインは、私たちを微笑ましく見ながら尋ねた。 「毎日会っていれば仲良くなるんじゃないのか? 友とはそういうものだろう?」 キースはカインにそう答え、私を見た。  (友、か。うん、そうだよね) 普通に友達だと思ってくれていることは嬉しかったが、私の中で何かトゲが刺さったようなチクッとした痛みが走ったのを感じた。 「そうか……」 カインは小さく呟くと、話題を変えるように私のほうを向いた。 「じゃあ案内してくれるか、サラ」 「はい。行きましょう!」 私も気を取り直して、キースとカインをステラの花屋に案内するのだった__。  夜の空に星がいくつも輝いている。 辺りはすっかり夜の闇に包まれていた。 ステラの花屋の前に到着した私たちは、街の人たちに顔を見られないように素早く店内に入った。 中ではステラがすぐに私を見つけてこちらに来てくれる。 「いらっしゃい、サラさん。おや、今日はお友達も連れてきてくれたのかな?」 そう言ってステラはキースとカインのほうを見る。 するとステラは、うやうやしく頭を下げた。 「これはこれは。キース様ではありませんか。失礼いたしました。私、ステラと申します」 「俺のことを知っているのか?」 「もちろんでございます。しかし、サラさんとキース様が親しいとは……」 そう言いながら、ステラは私をさりげなく見てウインクした。  (仲良くなれたんだね! 良かったね) ステラは私に目で合図してくれたようだ。 私も返事の代わりにステラに微笑みかけた。 「店主、このことは内密に頼む」 そんな私の後ろからカインがステラに話しかけた。 「承知いたしました。今日はごゆっくりと花を見ていってください」 「感謝する」 カインはそう言ってキースの後ろに立ち、キースと話をしながら色々な花を見ていた。 「ステラさん、今日はすみません。キース様がここの花を気に入ってくれて、一緒に来てみたいって」 私はステラにそう言って頭を下げた。 「こちらこそ、キース様に来ていただけるなんて光栄なことだよ。ありがとう、サラさん」 ステラは私に頭を上げるよう優しく言った。 「今日はキース様に花を選んでもらうかい?」 「あ、そうですね!」  (キース様はどんな花を選ぶんだろう……) 私は花を見ているキースを見て思った。 「キース様、今日はお部屋に飾る花をキース様に選んでほしいんです」 私がそう言うとキースが考え込む。 「花言葉はわからないが……この花が気になる」 そう言ってキースはマーガレットの花を指差した。 「これはマーガレットですね。キース様は可愛らしい花がお好きなのですね」 「少しサラに似ている気がしないか? なんというか、素朴な感じで」 キースは私を見て少し笑った。 「褒め言葉として受け取らせていただきます!」 私もキースを見て笑った。 そんなふたりを見てステラも微笑む。 「マーガレットには『誠実』という花言葉があります」 「『誠実』か。いいんじゃないか?」 キースが私に尋ねる。 「いいと思います! マーガレットにしましょう! ステラさん、今日はこの花をお願いします」 「かしこまりました。少しお待ちください」 ステラは、マーガレットの花を数本取ると綺麗に花束にしてくれる。 「サラさん。マーガレットには『心に秘めた愛』という花言葉もあるんだよ」 完成した花束を私に渡しながら、ステラが小声でささやいた。 「えっ……」 ステラの言葉を聞いた私は、そっとキースの横顔を見るのだった__。
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