164人が本棚に入れています
本棚に追加
第14話 片思いの恋
イーストン王国のキャサリンは退屈していた。
国王である父親から、サザーランド王国の第三王子とお見合いをしろと言われたが乗り気ではないのだ。
(結婚相手くらい自分で見つけるわよ!)
「キャサリン様、今日も見目麗しゅうございます」
何人もの男が、キャサリンにひざまづいてご機嫌伺いの挨拶をしていく。
父親の手前、無下に扱うことも出来ずにストレスが溜まっていた。
「お父様、少し外の空気を吸ってきてもいいかしら?」
「具合が悪いのかい?」
「違うわよ。ちょっと気分転換したいの」
キャサリンはそういうとベランダに向かった。
ベランダから見える景色は海しかない。
(見渡す限り海なのね。ほんと退屈な国だわ)
そう思いながら外を眺めていると、部屋の中が少し騒がしくなった。
サザーランド王国の国王とその息子である3人の王子たちが入ってきたからだった。
キャサリンはベランダからその様子を興味なさそうに見ていた。
すると、国王の後ろから1人の男性が前に現れた。
(あれは? なんて綺麗な方……)
キャサリンは一目でその男性の虜になってしまった。
そしてすぐに部屋の中に戻り、父親に尋ねる。
「お父様、あれは誰?」
キャサリンが指差す男性を見て父親が嬉しそうな声を出す。
「あれがキース王子だよ、キャサリン。お前のお見合い相手だ」
(なんてこと! 運命としか思えないわ!)
キャサリンは、心の中で歓喜しながらもう一度キースに熱い視線を送るのだった__。
窓の外が暗くなっている。
私は自分の部屋のベッドで目を覚ました。
知らぬ間に寝てしまっていたらしい。
大広間でキースのお見合いの話を聞いてから、自分の部屋にどうやって戻ってきたか覚えていなかった。
(私、なんでこんなにショックを受けてるんだろう)
でももう私は気づいていた。
きっとキースに恋してしまっているんだろう。
「私の片思いなのに、こんなに落ち込んでバカみたい」
私は、自分が滑稽で笑ってみるがなぜか涙が溢れてくる。
今日はパーティーがあるため、キースとは直接会うことは出来ない。
涙で濡れている顔を枕に押しつけて、私は再びベッドに寝転んだ__。
(サラはどこにいるんだ?)
キースは国王と兄たちと共に大広間に来ていた。
昨日の夕食時の会話で、今日のパーティーをすごく楽しみにしているとサラは言っていた。
(「隅のほうで見ていてもいいですか?」)
そうキースに尋ねたサラの笑顔は、花が咲いたように可憐だった。
しかし、今この大広間でキースが周りを見渡してもサラの姿はどこにもない。
(どこにいるんだ、あいつ)
色々な国の要人に挨拶をしながら、キースは大広間の隅々までサラを探した。
そんな時、イーストン王国の要人たちに今日振る舞われた料理の説明を終えたばかりの料理人を見かけた。
キースはさりげなくその料理人に近づく。
「おい」
キースが声をかけるとその料理人は振り向いた。
「キ、キース様! 何かご用でしょうか?」
声をかけられたエリックが緊張した顔で答える。
「今日はサラはいないのか?」
キースがそう尋ねると、エリックは首を縦に振った。
「はい、サラさん今日は体調が悪いようで部屋に戻りました」
「体調が?」
(風邪でも引いたのか?)
「わかった。ありがとう」
キースはそう言うと、エリックの元から去り、兄弟たちのいる場所に戻る。
(なんとかここを早く抜け出さなければ)
「兄上。一通り挨拶も済ませましたので私はこれで……」
偏食でキースがこういったところで食事が出来ないことを知っている兄たちは、いつもパーティーの途中でキースを見逃してくれていた。
「待て、キース」
第一王子のヘンリーが部屋に戻ろうとするキースを制した。
「はい、兄上」
「すまないが、今日はまだこの場にいてもらう。父上からそう言われていてな」
ヘンリーは申し訳なさそうにキースに言った。
「父上から、ですか?」
キースが不思議がっている隣で、第二王子であるグレゴリーがヘンリーに小声でささやく。
「ヘンリー兄さん、キースに詳しく教えてやればいいのに」
「俺から言えるわけないだろ」
ヘンリーとグレゴリーのやりとりを聞いていても、キースには何もわからなかった。
「申し訳ありません、少し用がありまして。これで失礼……」
「どこに行くんだ?キース」
キースが兄たちに話終わる前に言葉を遮られる。
はっ、としたキースの目の前には父であるサザーランド国王が立っていたのだった__。
最初のコメントを投稿しよう!