第15話 すれ違う二人

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第15話 すれ違う二人

 「どこに行くんだ? キース」 サザーランド国王が、席を外そうとしたキースを呼び止める。 「父上……」 キースは背筋を伸ばし、サザーランド国王に軽く頭を下げた。 「今日はこれから私と一緒に同行してもらう。ついてこい」 「父上、これからどちらかへ行かれるのですか?」 「お見合いだよ。お前の」 サザーランド国王は笑顔でキースの顔を見た。 「は? お見合いですか、? 私の?」 「そうだ。イーストン王国のキャサリン姫とお見合いしてもらう」  (なんだって?) キースは突然のことに戸惑った。 「ヘンリーもグレゴリーも婚約が決まっている。あとはお前だけじゃないか」 「それは、そうですが……」 キースが兄たちのほうを見ると、兄たちはキースから目を逸らした。  (くっ。兄さんたちは知ってたのか) 自分だけが何も知らされていなかったことに怒りがわく。 「さあ、イーストン国王とキャサリン姫がお待ちだ。行くぞ」 サザーランド国王はそう言うとマントをひるがえし、側近たちを引き連れて先を歩いていってしまう。 キースはその後をただついて行くしかなかった……。  私は、再びベッドに横になったものの、キースのことばかり考えてしまっていた。 何かしていないと落ち着かない。 その時ふと、ステラの笑顔を思い出した。 「そうだ、ステラさんのお花屋さんに行ってみよう」 私はすぐに身支度をすると、ステラの花屋に向かった。 「こんばんは……」 誰もいない花屋の店内に、私は小声で挨拶をする。  (もう夜も遅いし、店じまいかな?) そう思いながらお城に帰ろうとすると、私を呼び止める声が聞こえた。 「あー、ちょっと待ってサラさん」 私が店内をもう一度見ると、そこにステラが現れた。 「ごめんね。今から遅い夕食を食べようと思ってたんだ」 ステラが申し訳なさそうに私に言った。 「私のほうこそ、こんな時間に来てしまってすみません。夕食の邪魔までしてしまって……」 「いいんだよ。それより、どうかな? 一緒に夕食を食べていかないかい?」 これ以上、ステラに迷惑はかけられない。 グ〜〜〜 しかし、私のお腹の音が私を引きとめる。 (こんな時に!) 「ごめんなさい! 今日何も食べてなくて!」 「良かった! たくさん作ってしまってね。サラさんが食べてくれると助かるんだ」 ステラが優しい笑顔で私に微笑みかける。 「ありがとうございます。じゃあご一緒させていただきます」 私は、恥ずかしさで少し下を向きながらステラの店に入ったのだった__。  パーティーが行われている大広間からは、来賓たちの歓談やオーケストラの演奏が警備中のカインたちにも聞こえてくる。 こんな盛大なパーティーはいつぶりだろうか。 国のために、我々騎士団が厳重に警備をしなければならない。 カインは気持ちを引き締めながら城を眺める。 「なぁ、カイン。お前、キース様とは幼馴染なんだろ?」 すると、隣で警備をしている騎士仲間がカインに話しかけてきた。 「あぁ、そうだが、それがどうした?」 「さっき大広間から出てきたメイドの子から聞いたんだけど、キース様、お見合いするらしいぜ」 「は? お見合い?」 そんな話はキースから全く聞いていなかった。 「イーストン王国のキャサリン姫だってさ。いいよなぁ、美男美女で」 「不謹慎なことを言うな。誰が聞いているかわからないんだぞ」 カインは仲間の騎士を諭すと、再び警備をしながら考えていた。  (キースがお見合いだと? どういうことだ) ここ最近、第一王子のヘンリーが婚約。それに続き、第二王子のグレゴリーも隣国であるノルディー王国の姫君と婚約をしたばかりだ。  (隣国と手を結び、サザーランドを確固たる国にしようとする国王陛下のお考えはわかるが……) その時、カインはふと思い出した。  (サラはこのことは知っているのだろうか) 「少し城の周りの様子を見てくる」 カインはそう仲間の騎士に言うと、サラの部屋に向かうのだった__。
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