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第19話 キャサリンの執着②
次の日からキャサリンはキースの部屋に通うようになり、キースに付きまとった。
キースの朝はキャサリンの声で始まる。
トントン
「キース様、おはようございます!」
「ん、? キャサリン姫?! ……」
「目覚めの紅茶を入れておきました。お支度が終わったら飲んでくださいね」
キースがテーブルに置かれたティーポットとカップを見ると、その隣で専属の執事が困った顔で立っている。
「キャサリン姫、申し訳ありませんがこんなことをして頂かなくて結構です」
「これも未来の妻の役目ですわ! では、私はこれで」
キースの話も聞かず、キャサリンは部屋から出ていくのだった__。
キースが公務で外に出る時もキャサリンはついていく。
イーストン王国の使用人が運転する車で、キースが乗っている車を尾行するのだ。
キースを警備するために同行しているカインが顔を険しくしてキースに尋ねる。
「キース。キャサリン姫とのお見合いは断ったんじゃないのか?」
「俺ははっきりと断ったつもりなんだが……」
遠くからキースを見つめるキャサリンから隠れるようにしてキースはカインに言った。
そんなことを言われていることも知らず、キャサリンは見えなくなったキースを見ようと必死にキースを探しているのだった__。
キャサリンがキースの周りにいつもいることはすぐに城の中で噂になった。
「今日も朝からキャサリン様がキース様のお部屋に行かれたんですって……」
「公務では仲良く腕を組んでいたとかいないとか?」
「仲がいいのねぇ。ご結婚はいつかしら?きっと盛大なものになるわね!」
その噂は嫌でもサラの耳に入ってくる。
先日、思い切ってキースに告白をしたものの、キャサリンが突然訪問してきたためにまだキースからの返事はもらっていなかった。
(やっぱりキース様はキャサリン様と結婚してしまうのかな……)
気持ちが落ち込んだまま、キースのために夕食を作る。
料理が出来上がり、サラはそれをワゴンに入れる。
その時に冷蔵庫に入れておいたデザートのことを思い出し、少しの間ワゴンから離れた。
物陰からその様子を見ていた人物がいることも知らず……。
キャサリンはサラがワゴンから離れるところを見逃さなかった。
(サザーランドにいられるのもあと1日! これが最後のチャンスよ!)
キャサリンは周りに誰もいないことを確認すると、サラが作った料理に大量の塩を混ぜたのだった__。
サラがキースの部屋に夕食を運ぶ。
すると部屋の中にはすでにキャサリンがおり、テーブルの席についている。
「サラさんの食事が美味しくてまた来てしまったわ」
「キャサリン様のお口に合うようで良かったです」
サラは落ち込む気持ちをキースに見せないように料理を2人の前に並べた。
そして、2人の邪魔をしないように部屋から出ようとする。
「まて、サラ。お前も一緒に……」
キースがサラを引き止めようとした時、キャサリンが悲鳴を上げた。
「辛い!!! なんなのこの料理! こんなもの食べられないわ!」
顔を真っ赤にして怒るキャサリンを見て、サラがすぐに料理を味見する。
(塩が大量に入ってる! どうして?)
「サラさん! あなた、私とキース様が結婚することに嫉妬してるんじゃなくて? だからこんなことをしたんでしょう? 私知ってるのよ、あなたがキース様のことが好きだってこと」
「違います! 私はこんなことはしていません。信じてください!」
「あなたが作ったんでしょ? 信用できるわけないわよ! そうでしょ? キース様!」
キースは冷静にサラに尋ねた。
「サラ。お前はやっていないんだな?」
「はい」
サラはキースの目を見てはっきり答えた。
それを見たキャサリンはますます怒り狂う。
「こんなことをされてただじゃおかないわよ! お父様に言いつけるから!」
そう言ってキャサリンはキースの部屋を出ようとした。
その時、部屋の前に人影が現れた。
「キャサリン様、それくらいにしたらどうですか?」
そう言って現れたのはレンだった。
レンは自分のスマホをキャサリンに見せながら言う。
「俺、キャサリン様の行動を見張ってたんですよ。その証拠の動画、バッチリ撮らせてもらいました」
レンは動画を再生するとそれをそこにいる全員に見せる。
そこには塩を料理に混ぜているキャサリンの姿が映っていた。
「な、なによ! こんなもの、いくらでも作れるでしょ! 証拠にならないわよ」
キャサリンはまだとぼけるつもりでいる。
その時、塩の瓶を持ったソフィアが現れた。
「これが食堂に置いてあったからサラに聞こうと思ってきてみたんだが、そういうことかい」
ソフィアはキースに塩の瓶を渡す。
「これはイーストン王国だけで流通している塩でね、うちの食堂には置いてないんだよ」
キャサリンはそれを見て顔が青ざめた。
キースはキャサリンの前に出る。
「これでもまだとぼける気ですか? キャサリン姫」
「そ、それは……」
「私の大事な人にした仕打ち、許すわけにはいかない! キャサリン姫、今すぐサザーランドから出ていってくれ!!!」
キースの見たこともないような激怒した態度にキャサリンは怯え、その場を逃げるように走り去ったのだった__。
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