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第20話 永遠の愛
キャサリンが逃げるようにその場を去り、辺りはすっかり静かになった。
私はキャサリンの悪事を暴いてくれたレンとソフィアにお礼を言う。
「おふたりともありがとうございました。レンさんとソフィアさんがいなかったらキャサリン姫のやったことがわかりませんでした」
「あの姫、最初会った時から不審な行動してたんだよ。見張ってて良かったぜ」
レンが鼻を擦りながらニコッと笑う。
「証拠を残すなんて、馬鹿な姫だよ。今回のことはいい薬になったんじゃないのかい?」
ソフィアが笑いながら言う。
「それに……」
ソフィアが私だけに聞こえるように耳元でささやく。
「実は、私も若い時に先先代の国王に恋をしてねえ、その恋は叶わなかったんだが、あんたにはキース様とうまくいってほしいんだよ」
「えっ?」
「キース様のことが好きなんだろう? それくらいお見通しさ。逃すんじゃないよ!」
「は、はい……」
(まだ返事も聞けてないのに……)
私はレンと話をしているキースをそっと見つめた。
(落ち着いたらもう一度自分の気持ちを伝えよう)
そう思いながら、あることを思い出した。
「そういえば、レンさん、キース様に何か用事があるんじゃないんですか?」
「は?」
「この前、街からの帰り道にキース様のことを私に聞きましたよね?」
私がそう言うとレンは首を振る。
「もういいんだ」
「はい?」
「今回のことで俺、目が覚めたわ。自分の力でなんとかする」
そう言って、レンは拳を握りしめる。
「よくわからないですけど、頑張ってください!」
「おう!」
照れを隠すレンをソフィアが冷やかす様子を、私とキースはお互いに顔を見合わせて笑いながら見ていたのだった__。
☆
夕日がサザーランドの海に沈んでいく。
綺麗なオレンジ色の景色の中を私はキースと歩いていた。
今日はキースと一緒にステラの花屋を訪れたのだ。
先日の騒動で、飾ってあったピンクのマーガレットも被害に遭い、再び買い直してきたのだった。
海からの風が私の髪を撫でていく。
「少し風が出てきましたね。お城まで急ぎましょうか」
私はそう言ってキースのほうを振り向く。
目が合うと、キースは風でなびいてしまった私の髪を耳にかけてくれた。
「ありがとうございま……」
私がキースにお礼を言い終わる前に言葉を奪われる。
それは不意打ちのキス……。
「これが俺の返事だ」
顔を離すとキースはそうつぶやき、そして私の前に跪いた。
「サラ、俺と結婚してほしい。一生そばにいてくれ」
私の手を取りながらキースは私を見つめた。
「はい……」
涙がこぼれそうで、それだけ言うのが精一杯な私をキースは優しく抱きしめてくれる。
「愛してる」
キースはそう言ってもう一度私にキスをした。
夕日を背にしたふたりの影はいつまでも離れることはなかった__。
☆
海辺のチャペルから可愛らしいベルの音が鳴り響いている。
今日は私とキースの結婚式。
よく晴れた空の下には、街から大勢の国民が押し寄せ、歓声をあげている。
「キース様! サラ様! ばんざい!!!」
私がいる控え室にも、その歓声がよく聞こえる。
(今でも自分がキース様と結婚するなんて信じられないな)
白いウェディングドレスを身にまとった自分を鏡で見ながらそう思う。
その時、部屋をノックする音がした。
トントン
「こんにちは、サラさん、いや、サラ姫」
部屋に入ってきたのはステラだった。
「ステラさん! 来てくれてありがとうございます!」
「とても綺麗だ。それにお礼を言いたいのはこちらのほうだよ。僕に結婚式の花を任せてくれてありがとう。すごく光栄だよ」
ステラはキースの希望で、結婚式全ての花のコーディネートを任されたのだった。
「チャペルの中や、パーティー会場を先に見せてもらいました。可愛くコーディネートしてくれて、すごく嬉しいです。ありがとうございます」
「喜んでくれてよかった。僕からサラ姫へ贈る花だよ。マリーゴールド、花言葉は『変わらぬ愛』」
「『変わらぬ愛』」
「そう。いつまでもキース様とお幸せに! 僕からの願いです」
ステラは手を胸に当てて、かしこまって私にお辞儀をした。
しばらくステラと話をしていると、カインが部屋に入ってきた。
「サラ、どうだ、支度出来たか?」
カインは私の花嫁姿を見ると驚いたような顔をする。
「すごく綺麗だぞ、サラ。キースより先に見てしまってすまない」
申し訳なさそうに下を向くカインに、私が声をかけようとすると、部屋の入り口にキースが現れた。
「俺の花嫁に惚れるなよ、カイン」
キースは笑いながらカインに言い、私のほうを見る。
そして私に近づくと耳元でささやいた。
「本当は誰にも見せたくないくらい綺麗だ」
「キース様!」
恥ずかしがる私を笑いながら、キースは私にブーケを渡した。
「かすみ草のブーケだ。『永遠の愛』を誓いにいこう」
差し出されたキースの腕に手を絡める。
気持ちを確かめ合うようにお互いを見つめ合うと、キースが微笑んでくれる。
(私、絶対キース様を幸せにしますね!)
私は心の中でそう誓うと、キースと一緒にチャペルに向かって歩き出した__。 完
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