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私は2回の死に戻りも含めた前世に起きたことを全て思い出していた。
「探して会いに来てくれたの?」
「君が覚えているか心配だったよ。キャリィ。」
「ラルゴ…」
その夜はラルゴと久しぶりに一緒に過ごした。今世の今、18歳になるまでどんなふうに生活してきたかをラルゴは聞きたがった。
ラルゴは、あれからすぐに死に私と同じ時代にしかも人間として生まれ変わっていたことを教えてくれた。ラルゴは私より3年早く生まれ変わったそうで、生まれた時からラルゴとしての記憶を持ち、私を探して仕事の合間に様々な国を渡り歩いて来たそうだ。
今回は西のウェルンまで行き、手掛かりが見つけられないまま時間切れで戻るところだったと言う。
私が生まれたのは、前世暮らしていたフィライト王国から数年前に独立した新興国エルブランシュの西端でウェルンと国境を接している村だ。
普段ならラルゴは馬でこんな小さな村の街道沿いの安宿に泊まる予定ではなかったようだが、雨に降られて偶然見つけたうちの宿屋に飛び込んだそうだ。
「土砂降りの雨に感謝だな。」
「そうね。ところで今のラルゴは何をしている人なの?見たところ騎士って感じだけど。」
「いまはアベルと言う名前で…まぁ騎士みたいなもんだ。普段は書類仕事も多いがな。それよりキャリィは、僕と一緒に来てくれるか。またふたりで一緒に暮らしたい。」
「いいの?」
「キャリィがいないと意味がない。だから、君がどんな女でも例えばどこかの国の姫でも迎えられるようにがんばった。」
「ありがとう、ラルゴ。」
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