シャーロット

3/5
209人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
 私たちは、翌日宿屋を出発し彼の住む家に移ることにした。宿屋の夫婦は、急だったのに快く送り出してくれて、おまけに餞別までくれた。  私たちが到着したのは、エルブランシュの王都ベルプリュムのすみにある大きな建物だった。   「おかえりなさいませ。陛下。」    ちょっと待って…この国は数年前にフィライト王国から独立した新興国だけど、へいかって陛下よね?ラルゴが王様ってことなの⁈  騎士みたいなもので、書類仕事が多い…確かに王様は軍事のトップで書類仕事も多いけど王様だなんて思いもしなかった。  私が出迎えの侍従とラルゴを交互に見ている事に気付いたラルゴは当然と言わんばかりの顔をする。   「言ったはずだ。キャリィがどんな女でも迎えられるようにがんばったと。」    私の愛する人は、私のために王様になり、忙しい公務の間にひとりで王宮を抜け出し私を探し歩いていたと言う。私はそんな彼に何を返せるのだろう。   「大丈夫だ。今度は僕より長生きしてくれればそれでいい。」  私の考えていることなんか魔力がなくてもお見通しだとばかりに笑って言う。 「まずはちゃんと一緒に普通に幸せになろうね。」 「そうだね。たくさんの孫に囲まれていい人生だったってキャリィの手を握って旅立つんだ。」  私の愛した人は、私のために命を使い、私の為に自分の力を使い、生まれ変わってまで私のために王様にでもなっちゃうくせに私より先に死にたいというわがままな人のようだ。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!