第一章 光の国リルフォーレ

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騎士たちの役割は主に、国に入り込んだ魔物を退治すること。彼らは魔物と闘うための、攻撃や防御といった物理的な魔法を得意としている。 そして、イリス達天使の役割は、エネルギーを浄化し、国の中を清浄に保つこと。 人間を含む全ての生き物は、活動するためのエネルギーを世界から取り込んでいる。生命がエネルギーを消費すれば、その分エネルギーは淀んでしまう。 一般に魔物たちは清浄さを嫌い、エネルギーが淀むほど活性化する。淀みがあるということは、即ちそこに彼らの獲物となる生き物がいる、ということでもあるからだ。人が密集する国では淀みも溜まりやすくなり、より強力な魔物が集まって来てしまう。 そこでリルフォーレでは、国内のいたるところに小さな教会や神殿を設け、そこに一人ずつ天使を配置することとしている。天使たちがそれぞれの持ち場を日々浄化することで、清浄なエネルギーが国の隅々にまで行き渡り、結界を形成しているのだ。 特に、大聖堂を中心に置かれた4か所の神殿の浄化は、魔物から国を守るうえで最も重要な役割とされていた。 リルフォーレのすぐ外側の森には、自然豊かな分魔物も数多く潜んでいる。しかし、天使たちの浄化のお陰で、そのほとんどは国内に侵入してくることは無い。 この清浄さが保たれなければ、歴戦の騎士たちの手にも負えないほどの大量の魔物が、国に押し寄せているだろう。 つまり、騎士と天使は互いに一蓮托生となって、リルフォーレを守護しているのである。 祭壇の間で待つこと数分。 ギィ、と音を立てて、古い木の扉が徐に開く。 「おはよう、イリス。もう来てたのね。」 「天使長様、おはようございます」 先頭で入って来たのは、優美で凛とした初老の女性。国内全ての天使たちの最高責任者、天使長カーシャだ。 カーシャは後ろを振り返ると、連れて来た3人の少女たちを、順にイリスに紹介する。 「右から、リタ、レイナ、エルダよ。神殿の守護職として、今日から貴女とともに任務にあたってもらうわ。」 名を呼ばれると、少女たちは小さくはにかみながら、イリスに会釈した。そんな彼女たちに、イリスも微笑んで一礼を返す。 「さあ、早速“就任の儀”を始めましょう。イリスは、その間少し待っていてちょうだい」 そう言うなり、カーシャは3人の少女を引き連れ、祭壇の前へ進む。イリスは一番後ろの椅子に腰かけて、そっと儀式を見守るのだった。 ☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩
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