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第二章 騎士と天使
国の最奥、北側にある大きな建物は、リルフォーレ城。そしてその城壁の内側にはもう一つ、騎士たちが詰める守衛館が建っている。
天使と同様、騎士たちにとっても、春は昇格の時節。守衛館では、今春昇格した騎士たちの任命式が行われていた。
中でも注目を集めていたのは、亜麻色の髪に、澄み切った青空色の瞳の青年。
いや、青年と呼ぶにはまだあどけなさが残る彼は、この度十八の若さで守衛部隊長に任命された騎士、アークだ。
式典を終え、隊務に戻ったアークを、早速同僚の騎士たちが祝福する。
「昇進おめでとう、アーク。今日からお前が“隊長”かぁ」
「同期が最年少で隊長に任命されるなんて、私も誇らしいわ」
アークと同い年の騎士、ジルとソフィー。見習いだった頃から、共に訓練に励んできた仲間だ。
「やめろよ、今更“隊長”なんて。今まで通り“アーク”でいい」
2人は今日から、アーク率いる守衛部隊の隊員として配属される。橙を帯びた茶髪で、がっしりと大柄なジルと、金髪金眼ですらりと細身のソフィー。体格も戦い方も正反対の2人だが、共に優秀な若手騎士だ。
「あーあ、やっぱ出来る男は違うっすね。俺なんてまだ採集しかさせてもらえないのに」
横で唇を尖らせているのは、3つ年下の後輩騎士、カイ。短く切り揃えた黒銀の髪に黒い瞳をした、アークの部隊4人目の隊員だ。
ふてくされた顔をしているが、実は彼も、この春晴れて見習いを卒業し、騎士として配属されたばかり。式典の主役の一人である。
「なんだ、採集に行くの、嫌なのか?俺が代わってやろうか」
「い、いいんすか!?」
アークに言われ、目を輝かせるカイ。
森に自生する草木の葉や実には、回復薬や毒消し薬の材料となるものがある。その他にも、貴重な栄養源や嗜好品として重宝されるものも多く、需要は大きいのだが、それらを採取するには、魔物が潜む森の奥まで分け入っていかなければならない。
人々の暮らしに欠かせない採集業務も、騎士たちの重要な仕事の一つだ。
「アークは見習いの頃から、採集の達人だったもんなぁ。」
ジルが数年前に思いを馳せる。見習いとして初めて採集に出た日、麻袋いっぱいに薬草や木の実を詰めて戻って来たアークに、教官も目を丸くしていたものだ。
「へえぇ、出来る男は、何をやっても一流なんすね!」
「カイ、感心してないで、あんたもこれからしっかり採集するの!ほら、行くよ!」
守衛部隊には、それぞれに担当する仕事が割り振られている。アークたちのような若手が集まる部隊の仕事は、採集や街の見回りなどの日常業務を任されるのが一般的だ。
「じゃ、2人は街の見回り、よろしくね!」
「ああ、森では気を付けろよ」
カイの腕を引っ張りながら森に向かうソフィーを見送った後、アークとジルも街に繰り出していった。
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