第十章 祭りのあと

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「大丈夫、どうせ今日は内勤だから。それにやっぱり、今は1人で作業しない方がいいわ。もし貧血起こして倒れても、誰も気づいてくれないかも知れないでしょ」 「…そうだね。午前中は中々作業が進まなかったから、ソフィーがいてくれると助かるな」 イリスが言うと、ソフィーも微笑んで。 「力を合わせて、今日中に終わらせちゃお。…もし邪魔が入ったら、私が締め上げて追い払うから」 そう言って、イリスの向こうに座るアークを、ちらりと見やる。 「…分かった。よろしく頼むよ」 アークが頷き、ソフィーも満足げに笑みを深める。 その正面ではジルとカイが、やや青ざめた顔で苦笑しながら、『どうか平穏な午後が過ごせますように』、と女神に祈るのだった。 ☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩ 「はぁ、色々あったけど、保管庫が片付いて良かった!」 夜も更けた病室のベッドの上に腰掛けながら、寝間着姿のイリスが達成感に満ちた笑顔を浮かべる。 「前とは見違えるように綺麗になってたな。助かったよ」 そしてその傍らには何故か、仕事を終えたアークの姿。 「…ねぇ、アーク。宿舎で休まなくていいの?明日も仕事なのに」 「ああ」 イリスは心配そうにアークを見やるが、アークは何でもないように頷く。 昼間のソフィーの叱責が効いたのか、保管庫に詰めかけた騎士たちの大半は、反省して仕事に戻ったらしい。 しかし、中にはそれでも懲りずに戻って来る不届き者もいたようで、もれなくソフィーに撃退され、保管庫から放り出されたとのこと。 さらに厄介なことに、イリスがちょっと保管庫から出て来たところを捕まえて、しつこく話しかけていた者もいたとか。 そんな話を聞かされたら、アークとしては不安で休息どころではない。もし、イリスが寝ている間に、部屋に忍び込んでくるような輩がいたら… 「イリスが退院するまで、夜はここで過ごすよ。見張っておかないと、あいつら油断も隙も無いからな…」 「でも、それじゃアークが休めないよ…」 そう言ってイリスが俯くと、アークもイリスと並んでベッドに腰掛けた。 「騎士にとって、寝ずの番なんて日常茶飯事だ。心配しないで、ゆっくり休んでていいぞ」 「…うん」 イリスはまだ浮かない表情のまま、窓の外の星空を見つめている。そんな様子を横目で見やり、アークは。
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