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「ああ、毎年一人旅行してますもんね。最近は本人から言わなくなったけど」
これは、私のことだよね……?
「いくら仕事ができて独身謳歌してても、寂しいものは寂しいんですかね……」
「うーん、足田さんくらいになるとあまり気にしなさそうだけど」
「さすが、仕事に生きるって感じの方ですもんね」
いやいや、寂しいけどね。ものすごく。仕事に生きているんじゃなくて、仕事しかないのが正しいのだけれど。
「やっぱり仕事だけの人生は嫌だな。私もさすがに彼氏に結婚迫ってみようかな……」
「えー赤沼さん彼氏さんいるんですね! どんな人ですか?」
再びキャッキャと楽しい会話になり、二人が出て行く。ドアが閉まり、誰もいなくなったことを確かめると、大きくため息をついた。
まあ、そうだよね……。いくら仕事ができたって、寂しい女ですよ、私は。
敢えて言わなかった一人旅のことも、課のみんなにはお見通しのようだ。
途端に虚しい気持ちに襲われ、今すぐ消えたい衝動に駆られる。けれど送別会だって仕事の延長なのだからと、切り替えて席に戻った。
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