6. 幸せになる方法

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 その夜、「一緒に飲もう」と親友を私のアパートに呼んで手料理をご馳走した。もちろん、人魚の肉を混ぜてね。  親友は人魚の肉を食べて、知らずに不老不死になったのだよ。  それから数年が経ち、親友は自分だけ老いないことに気づき始めた。  三十路を過ぎ、彼女は変わらず美しかったがそれなりに歳を取っていた。ところが、親友は二十代の若々しさのままなのだ。  彼女との結婚を前にした親友に、私は匿名の手紙を送り真実を伝えた。  お前は人魚の肉を食べてしまったのだとね。  ショックを受けた親友は、この街から、そして婚約者の前から黙って姿を消したんだ。 「何も告げられず婚約者に去られた彼女は、大きなショックを受けた。そんな彼女の哀しみに私はただ寄り添い続けたよ。そして彼女の傷が癒えたところでプロポーズして、彼女を妻にすることができたんだ」  私は今まで誰にも語ったことがなかった真実を、この見知らぬ若者に告白した。  それは若者の立場が若い頃の自分に似ていて同情したのと、この街を明日離れたら二度と戻ってくることはない気安さからだった。それと……。  若き日の武勇伝を、誰かに知ってほしかったのかもしれない。
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