恋した親しい子

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恋した親しい子

……大丈夫、まだ大丈夫。 僕は僕を、まだ何とか覚えているみたいだ。 ちょっと思い出してみようか。自分の事を。 僕は秋葉潮雄。高校二年生。 身長はもうちょっと欲しい167センチ、体重は50キロ。趣味は絵を描く事と漫画を含む読書(電子書籍)。スポーツは全般的に苦手で、顔面偏差値は多分平均点。 そんなモブキャラの僕だけど、自慢出来るものが二つある。 一つは最笑(さえ)ちゃんという同級生の可愛い恋人がいる事。 もう一つは、実は超能力を持っている事。 これは自慢どころか誰にも話した事はないけど、本当なんだ。 超能力に気付いたのは先月、6月10日。僕が最笑ちゃんを初めてデートに誘った時だった。 彼女は身長は僕と同じくらいなのに、腰の位置が全然違ってスラッとしてて、名前の通り笑うとめっちゃかわいい。 それなのにジェットコースターとかフリーフォールとか、絶叫マシンが大好きで。バンジージャンプも平気で飛んでしまう勇者でさ。 僕はスポーツも苦手だけど、そういうのもあまり得意じゃない。 でも昼休み、最笑ちゃんと二人で話すチャンスが到来してさ。 遊園地の話題になった時に、僕は体中から酸素と勇気を振り絞ってかき集めて、言葉を必死で声にしたんだ。 「良かったら今度、二人で行こうよ」
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